「ちぃっ、これじゃ計算違いだ」
乙さんはそう叫ぶや否や、どこかへ走り去って行った。
「どうしたんだろ?」
試合が早めに(勝利で)終わってホッとした僕は乙さんの行動がすぐには理解できなかった。
「多分、毎試合の目標得点みたいなのがあったんだと思うよ…」
「あ、そうなんだ。じゃあ今の試合何点取るつもりだったんだろ?」
「目標は40点とか言ってたよ、でも相手がみんな体調不良なんておかしいな…」
楸さんは腕を組んでしきりに考えこんでいる。
言うべきかどうか迷ったけど「めんどくさい」の理由で知らないフリをしておいた。
次の試合までだいぶ時間もあることだし、観戦席でのんびりと観戦することにした。
2階に上がり様、雪菜さん達とすれ違った。
葵さんと雪菜さんはにこやかな笑顔で「御疲れ様」と声をかけてくれたし、茜さんと花はハイタッチをしている。
「うちのクラスに勝ったの気にしてる?」
誠さんが聞いてきたので「はい」と答えておいた。
花の背中越しに茜さんが「あいつら捨て駒みたいなもんだから気にすんな。元々あいつらの失点分はあたしらが稼ぐつもりだったしな」と。
もう、茜さんは向かう所敵なしですね。
「むしろ、あいつらが1回戦勝ったのが不思議なくらいだしな」
「そうそう、1年5組の上尾さんだったかな?なかなか笑わせてくれたしね」
誠さんが言い終えたと同時に乙さんが駆け戻ってきた。
「ちょっと、上で会議よ。先輩方、また!」
乙さんは何故か僕と祟君の手を引っ張って階段を駆け上がっていった。
僕の空いた手に花がぶら下がって、そのもう片方の手に楸さんがぶら下がっているが、乙さんは物ともせずに階段を登りきった。
「いい?Cブロックに姉のいるチームがいるの…」
「姉って生徒会長の迫さん?」
「そう、そのチームと最終日に当たるんだけど、まず100%勝てないわ」
「そして、その前に得点を稼いでおいて当たらずに負けてしまえばよかった…?」
自信無さ気に楸さんが聞いた。
「そうなの、本当なら今の試合で40…できれば50点差は欲しかったんだけど、20点しか稼げてないでしょ?このまま3回戦を1点差で負けたら良くてもうちのチームは19点。勝ったとしても姉のチームには40点差はつけられるだろうから次では少なくとも39点差で勝たなければ結果は一緒、むしろ悪くなる可能性が大きいわ」
そう言ってポケットから電卓を取り出し、左手で持って右手の人差し指、中指、薬指を器用に動かして画面に出た数値を皆に見せた。
「勝って終わりたいなら次の試合でせめて60点差、負けるなら1点差。その点差は61点よ、取れる自信はある?」
ない…僕はそう思った。
今回は祟君に呪いをかけさせるわけにはいかない。
次の試合で61点以上を取るには10分間ではどうしても足りないし、準決勝の迫さんチームと当たるとなると…別にどうって事はないか?
でも、人道的にやばい気がするから呪いの類はやめておいて欲しい。それ以前に相手チームが立て続けに体調不良になったら理由はわからないにせよ僕達が怪しまれる事は間違いないだろう。
「さすがに3回戦まで残ったチームを無失点でおさえるのは無理ね。取られても10点、私達は70点以上取る事が目標よ」
花と楸さんは物凄くやる気満々だ。
祟君はニヤニヤしながら袋を握っている…後でそれは駄目だと言っておこう。
「それじゃあ次の試合まで攻撃方法の確認ね。まず…」
僕としては1点差で負けた方が気が楽なんだけどな〜と思いながら乙さんの話に聞き入っていた。
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