Dブロックの第2試合が始まった頃に急に緊張してきた。
「ちょっと行ってくる」
隣でわーわー言いながら観戦していた花にそう言い残しトイレに向かった。
何となく1人になりたかったので校舎のトイレに行く事にした。
…カーンカーン
ん?何の音だ?
トイレに近付くにつれて音は大きくなる。
いや、これは行こうとしていた男子トイレから聞こえている。
物怖じとかそういう感覚よりも好奇心が優先してトイレのドアを勢い良く開いた。
ゴツッと鈍い音と同時に「痛い」と情け無い声が聞こえた。
さっきの音が聞こえなくなってるって事は犯人(?)か!?
そーっとドアの中を覗いてみると同じチームの祟君が木槌をかかえて転んでいた。
「や、やあ。中村君」
「そんなとこで何してんの?」
いや、わかっている。僕がドアをぶつけたせいで転んでいるのだ。
そんな事はお互い意にも介せずに話を進める。
「いや、何か緊張してきたから精神統一を…」
「そうなんだ。って、何で木槌が?」
「精神統一というか儀式みたいな物でね、こうやって木槌で釘を打つと…」
祟君は頼んでもいないのに行動を交えて説明し始めた。釘にはどこから入手したのか2-2bチームの生徒の写真とその下に何枚かの写真が刺さっていた。恐らく他のメンバーだろう。
するとドア越ではそう大きくなかった音がトイレ内に大きくこだました。
「いや、もういいから。むしろやめて」
「そう…。あ、中村君はどうしてここに?」
「ちょっと緊張しちゃってね。1人になたくてこのトイレに来たら祟君が…」
「そうなんだ。そろそろ僕達の試合だよね」
「あ、そうだね。じゃあ行こうか」
「うん」
返事をするとすぐに祟君はジャージから白い布袋を取り出し、釘や写真、木槌を大事そうにしまった。
体育館に戻ると僕達の前の試合のハーフタイムだった。
「裕ちゃんおかえり〜。何か凄い事になってるよ」
花が僕の姿を確認してから得点板を指差して言った。
1-1a対3-5b…ふむ、端のクラス同士だな。
点数は44:44…何か不吉だ。
「こりゃまた凄いな…」
「でしょでしょ?で、何で祟君と一緒なわけ?」
その祟君はと言うと僕の後ろでコソコソしていた。
「ああ、トイレで会ったんだ」
「ふーん」
「花ちゃん、そろそろ控え室に行かないと…」
花の横で観戦していた楸さんが立ち上がった。
「そういえば乙さんは?」
「乙っちゃんなら、ほら」
乙っちゃん?と、ちゃん付け好きだなーと思いながらまたも花の指先を見ると…乙さんは主審をしていた。
「ほぇ…」
「何情けない声出してんの?行こーよ」
「あ、うん」
これまた祟君は僕の後ろをコソコソ歩いてついて来た。まあ、選手だから当たり前か。
2階の観戦席から降りると何故か椿さんが1人で待ち構えていた。
「あれ?与一は?」
昼休み、与一がなかなか起きないもんだから椿さんが「与一さん起こしてから行くね」と教室に残っていたのだ。
「うん、あれからずっと寝たままだから置いてきちゃったんだ」
「寝る子は育つ…」
楸さんがわけのわからない事を呟いたけど…子?
「じゃあ、頑張ってね」
中身は男だけど見た目男女とも取れる椿さんに応援されて少し元気が出た…かも?
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