「うん、うまい」
我ながらよくできたものだ。
自分でうまいとか言って皆に退かれるかと思ったが、調理に集中してくれている様子で然したる反応はない。
隣の与一は既にシチューを平らげて、ナイフを使わずにフォークで肉を貪っている。
因みに、中々の肉なので、ナイフなしでも噛み切れたりするわけだ。
それだけの肉をあの値段で置いてあるスーパーマルカワは大物になるな。
チラリと誠さんを見てそう実感した。
「なんだい?」
「いえいえ…何でもありませんよ」
のんびりと食事を取り終えると大鍋にあったシチューも空っぽになり、片付けが楽になってよかった。
因みに、雪菜さんが3杯、与一が2杯おかわりをしていた。
花や乙さんは雪菜さんの大食ぶりにたじろいでしまっていた。
「今日は良く動いたから丁度良かったわ、裕君ご馳走様」
食器を片付けていると毎度の如くカウンターで僕の話し相手になってくれている(?)雪菜さんの第一声がこれだった。
「今日はお金かかってましたからね、お客さんもいたことだし」
「そうね、これで生徒会への印象も良くなるかも知れないし…」
そこまで考えていたのかこの人は…
食後の雑談をしている一同には悪いが、食器洗いも終わった事だし雪菜さんに解散の合図でもしてもらうか。
「そろそろ帰りましょ」
「えー」とか「はーい」とか聞こえて各自帰宅の準備に取り掛かった。
因みに乙さんと花が誠さんと茜さんと楽しくおしゃべりしていたので2人が「えー」と反抗したのだった。
椿さんが与一、楸さんが葵さんと塒さんと話していたが、この5人は物分りが良い様子だ。
部室を出て一足先に自室に戻った。
インターホンが鳴り、はいはいとドアを開けるとそこにはチワワが!?
なんてことはなく、楸さんと花だった。
「今日はありがとう…」
「裕ちゃんお疲れさま〜」
それだけのために来たのか?律儀な人だなぁと思った。
「わざわざありがとう。じゃ、またね」
バイバイと手を振って2人が行ったのを見届けてドアを閉め、鍵もきちんと閉めた。
「青春だね」
「そうね」
「だな〜」
何でいるんですか、あなた達は!?
「住居不法侵入で訴えますよ」
「まあまあ、僕達もお礼を言いにきたんだから」
「それだけですか?」
「うん、それだけよ」
「じゃ、またな〜」
誠さん、雪菜さん、茜さんの3人はどこから入ったのやら手に持った靴を玄関で履いて帰っていった。
「あの人達は忍者か…」
呆然とそれだけ呟くと、
「ああ、裕君。明日の僕の試合は11時からだからゆっくりでいいよ」
玄関のドア越しにそんな誠さんの声が聞こえた。
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