楸さんの足取りがおぼつかない。
「楸さん大丈夫?持とうか?」
「ごめんね…よろしく…」
やはり雪菜さんとの1on1の影響だろうか?
ビニール袋を4つぶら下げながら楸さんの横を歩く。
荷物が減ったからだろうか、さっきよりは真っ直ぐ歩いてるな。
マンションが見える角まで来ると、チワワがいた。
「やばい」
「え?」
「ほら、例のチワワだけど…知らない?」
「チワワ…?」
「うん、葵さんか食べ物にしか反応しない獰猛なチワワがこの辺にいるんだよ」
「そうなんだ…」
半信半疑のようだが実際に見ればわかる…と思ったけど、見つかったらやばいんだよな。
「今日は肉類豊富だから普段以上にピンチだ…」
「そうだね…やっぱり半分持つよ。走れば何とかなるかもしれないし…」
「うん、ありがとう。角を曲がったらすぐに走ろう」
「はい…」
緊張した面持ちでビニール袋を受け渡す高校生が他にいるだろうか?
チワワは定位置にいた。
左に曲がればチワワ、右に曲がればマンションの玄関口。
勿論右に曲がるわけだが、楸さんがちょっときつそう。僕も少しきつい。
マンションの玄関口には葵さんがいた。
「裕君、楸ちゃんこっちです」
手招きされ、マンションに向かう。
「先に上がってて下さいね」
チワワの方へ小走りで寄る葵さんがすれ違い様にそう告げた。
「楸さん行こう」
「え?でも葵先輩…」
「葵さんなら大丈夫。ていうか葵さんしか大丈夫じゃない。急ごう」
「はい」
階段を急いでかけあがり、部室へ駆け込んだ。
「ただいま戻りました」
出迎えてくれたのは雪菜さんと塒さん。
「おかえりなさい」
「おかえり、って私が言うのは変か」
塒さんが自分に駄目出し。
「雪菜さん、お金結構余っちゃったんですけど」
「そう、いくらかかったの?」
「7000円です」
楸さんが「え?」というような表情を浮かべた。
「その顔は6494円ね。とりあえず1万円だけ返して頂戴」
その顔はって…
「何だか僕が6494円みたいな…」
「気のせいよ、そんなに高くないでしょ」
塒さんが堪え切れずにププッと笑った。
「でもどうして値段わかったんですか…?」
楸さんが聞くと、
「裕君の目がそう言っていたのよ、裕君嘘下手だしね」
何か頭をハンマーで殴られたようなショックだ。殴られたことないけど。
「相変わらず凄いですね」
「そうかしら?私凄いのかしら?」
「雪菜ちゃん、あんた凄いよ」
自覚してないあたり凄さ倍増だ。
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雪月花
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