控え室は4つしかないというわけで次の試合が終わる頃には選手は控え室から出る事になる。
普通ならタオルに包まりながらプールサイドで他の試合を観戦するものなのだが、この集団に限っては何故か体育館が溜まり場になる。
体育館なら床もそう汚れてないからと阿江君に手伝ってもらいながら楸さんを下ろした。
折角下ろした苦労を無駄にするかのようなナイスタイミングで目覚める楸さん。
「おはよ〜」
「はい、おはよう」
阿江君が答える。
「あ、阿江君いたんだ…」
「うん。それより中村君にお礼言わなくていいのか?」
「裕さんありがとう…凄く寝心地よかったよ」
寝心地と言われても…ねぇ?
どう答えていいのかわからない。
「うん、それよりゆっくり休めた?」
今更になって何故か照れた様子で、
「うん…おかげさまで…」
そんな風に言われるとこっちが恥ずかしい。
雪菜さんが口元をニヤニヤさせながらこっちを見ているのがわかる。
これは後でからかわれるだろうな。
祟君と談笑していた…というよりは一方的に話していた花も楸さんの目覚めに気付いた様子で、
「楸ちゃんおはよー」
「花ちゃんおはよう…」
と楸さんはあくびを1つ。
「裕ちゃんの背中気持ちよかったでしょ?」
「うん、ベッドにしたいくらい…」
ベッドかよ!?
そんな表情が見えたのだろう。
「ごめん、布団だね…」
だから何故寝具!?
「あ、敷布団の方だからね…」
「もういいよ」
はぁ、とため息が出た。
僕の学ランは楸さんが羽織っているのだが、タオルに包まっている水球の選手のように両手で前を握っているため返してとは言えない。
楸さんが花とフフッと笑いながら話していると祟君の様子にも気付いた様子で、
「あ、ジュジュもいたんだ…」
「ひさひさおはよ」
「ジュジュ?」
花が楸さんに不思議そうに尋ねた。
「うん、中学からの同級生でね、その時の仇名なの…」
「ひさひさって言うのは?」
この質問には祟君の変わりに阿江君が、
「中学時代に呪矢が保科双子を間違えちゃってね。一度椿に注意されても分からなかったから短く仇名にすればわかるだろうと何の根拠もない理由で呪矢だけが楸をひさひさ、椿をつばつばって呼んでるんだよ」
「そうそう、それで区別がつくようになったんだよね」
祟君が締めくくるもその不思議君が自分っていう自覚はあるのだろうか?
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