時間は飛んでAM10:45。
与一達の試合も終盤だ。
「乙、こっちだ!」
「椿さんはい!」
「え?あ、はい!」
与一がパスを要求したがことごとく無視され椿さんがパスを受け取りゴールを決めた。
ピーっと笛が鳴り試合終了。
開始前「よーし、暴れるぞぉ!」と張り切っていた与一は終始泳ぎまくっていた。
結局乙さんを司令塔とした1-2aチームは22:4と圧勝。
与一もそれなりに点数を決めたのだが、相手が男だけのチームというのもあってファウルを何度も繰り返し、もう一度ファウルをしたら退場と言われた所で点取りに切り替えたのだった。
さて、これから午後まで試合はない。
「どうせだから皆で一緒に食べよう」と、各々準備していた弁当やらを持って体育館の入り口周辺を陣取った。
ここで食べるのはあの時以来だなと以前茜さんに呼び出されて試合したのを思い出す…あの時負けて、昨日さらに負けたバスケ部員が可哀相に思えた。
双子が隣同士に座っているが、椿さんはジャージ、楸さんは制服(女子用)なので着替え前と着替え後の同一人物のようだった。
隣で上品に弁当を食べていた葵さんにその隣で同じく上品そうにコンビニの幕の内弁当を食べていた雪菜さんが手袋を渡していた。
弁当を食べ終えた葵さんがちょっとフラフラしているので雪菜さんが「横になったら」と声をかけた。
胡坐をかいていた僕の膝あたりにポトっと頭を落とし眠そうに「あ…裕君ごめんなさい」と言ったが雪菜さんに「そのまま寝かせてあげて」と言われ葵さんが再度「ごめんなさい」と寝てしまった。
「やっぱり2日連続はきつかったみたいね」
「そうだな、左手のも怪我もあるから思ったように動けなかったみたいだし」
そう返したのは茜さん。
「でも、決勝を挟む連続じゃなくて良かったと思うよ。決勝の方が試合内容激しくなるだろうからね」
「確かにな…それに葵の遠距離シュートがないとこう楽には勝てないだろうしゆっくり休んでもらうか」
誠さんの発言に茜さんが同意。ってなわけで、僕は自由を奪われているのだ。
別に嫌じゃないんだけど…あの、緊張するし。
乙さんは「体育委員会は当てにならないから」と昨日同様生徒会室に走り去って今はいない。
昨日のフェンス前での別れ際に塒さんが「明日は1日運営だから気疲れしそうだわ〜」と疲れた様子を見せていたし、生徒会ってのは大変なんだろうな。
まだ迫さんとは話した事ない。一体どんな人なのだろうと考えてみた。
とりあえず凄まじい人なのだろう…他に具体的な事は思い浮かばない。
瀬戸泉姉妹は、容姿はどことなく似てるって感じで椿さん・楸さん双子程似てはいない。
塒さんはどこかキレのある人で、乙さんは考えてから行動するタイプに見える。
そんな事を考えていると午後最初の試合開始まであと20分って時間だった。
「そろそろ起こさなくていいんですか…って、あれ?」
考え事をしていたせいか、周りが見えなかったのは認める。
気が付けば1年生vs2年生でバレーをしていた。
「葵さん、葵さん」
そろそろ起こした方がいいだろうと声をかけるが反応はなし。
肩のあたりをゆすってみるとウーンと唸って寝返りをしてしまった。
これまた器用に僕の膝から足の付け根まで。
「葵さん、与一が暴走してますよ」
「え?」
不意に起き上がった葵さんはポケットから何かを出そうとした。
恐らく与一に投げつける物だろう。
さすがに何も悪い事はしていない与一が怪我をするのは可哀相だと思い、
「葵さん、冗談だから与一に投げつけないで下さい!」
と声を荒げてしまった。
与一がビクっと反応してレシーブをし損ねたため、花から胴への回し蹴りを食らっていた。
「えっと…あれ?」
葵さんは何が何だかわからないといった様子で、周りをキョロキョロと見回している。
「すいません、そろそろ起こした方がいいかなと思ったんですが、なかなか起きなかったんで…」
「あ、そうですか。じゃあ、お早う御座います」と深々と頭を下げられてしまった。
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雪月花
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