特に何をするわけでもなく雪菜さんと楸さんのプレーを眺める一同。
葵さんの髪を茜さんが櫛で解かしている。
途中、前の試合の選手が更衣室へ入っていったが知り合いがいるわけでもなく様子を確認してからバスケに目を戻した。
花は誠さんから葵さんと茜さんの試合の様子を聞いている様子。
与一が一足先に椿さんから逃げるように更衣室から出てきた。
「与一さん待ってー」
「えーい、引っ付くなー!」
ぎゃあぎゃあ喚き散らしながらそこら中を駆け巡る2人。
茜さんが「はい」と葵さんに櫛を渡したのが見えた。
次の瞬間、与一の髪に見事に櫛が突き刺さっていた。
与一が立ち止まり、椿さんが「ほら、ゴーグル忘れてるよ」と渡そうとしたが、与一は恐怖に歪められた表情で櫛のあたりを手で探っていた。
その櫛が、和服の女性がつけるような髪留めに近い物だったので、
「アッハッハ、与一似合うぞ〜」
と茜さんが大爆笑。
そこへ更衣室から出てきた乙さんが、
「与一何してんの?女装癖あったわけ?」
と半ば呆れ顔で与一をけなした。
「椿、取ってくれ!」
「はいはい」
櫛を取外し、ゴーグルを渡してから椿さんは葵さんの元へ駆け寄った。
「御苦労様です」
葵さんが笑顔を椿さんへ向け、椿さんも笑顔を返す。
そんな微笑ましい光景の向こうでは、与一が手を櫛の刺さっていた辺りに当て、掻くような仕草をし…
「やっぱ、血出てるし!」
と大騒ぎしていた。
乙さんはそんな様子を気にも暮れず、
「雪菜先輩、楸ちゃん、一応許可出てないからその辺でやめといて下さい」
「はい、楸さん、ラストね」
「はい」
楸さんは方で息をしている。
雪菜さんが楸さんから距離を取り、ミドルシュートを決めて1on1は終了した。
「じゃ、行きましょうか」
ブラウスの乱れを整えてから雪菜さんが告げるとあれだけ慌てふためいていた与一さえも「はい」と大人しくなってしまった。
「なあ、裕」
いつの間にか背後に来ていた与一。
「ん?」
「最近みんな俺に冷たくねぇ?」
今に限った事ではないと気付いていないのだろう。
「気のせいだろ。選手なんだから急げよ」
「ん?ああ…」
納得いかないのだろうか、どことなく寂し気な背中を見せながら与一はとぼとぼと乙さんと椿さんの後ろを歩いていった。
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