無人の体育館…のはずだが、男女別の更衣室はプールよりもこちらの方が広いので体育館のを使われる。
控え室で長々と喋っていたせいか、2-2aの着替えは最後となり悠々広々と更衣室を使っているわけだ。
その間勝手にバスケットボールを持ち出してきた雪菜さんが楸さんと1on1を始めた。
身長差では楸さんが5cm程有利なのだが、去年まで茜さんと誠さんとストリートバスケに通っていたらしい実力は楸さんの上を行っていた。
「椿く…椿さんもやるかい?」
誠さんがもう1つボールを持ち出して椿さんを誘っている。
「でも勝てる自信ないですよ」
「別に勝とうなんて考えなくていいさ、何なら裕君と組めばいいし」
雪菜さんと楸さんの方を見ていた僕は「え?」と振り返り、「じゃあ、頑張ろう!」と椿さんが張り切っていたので僕に拒否権は与えられなかった。
1人与一は入り口の扉の所でうずくまっている。
すると勢い良く開き扉が開いて与一が蹴り飛ばされてしまった。
現れたのは花。
「セーフ!」
微笑ましいくらいに元気一杯だが、与一を蹴り飛ばした事にすら気付いていない。
少し離れた所まで転がされた与一は不意に目が覚めたように「ここどこだ?」と辺りを見回している。
どこからどう見ても体育館だという突っ込みは誰一人としてなし。
いきなり現れた花に対して誰も反応が無かったのが不安なのか、
「…だよね?」
と確認する花。
数名が首を横にフルフルと振ると、
「え?だって茜先輩と葵先輩いないから今着替えてるんじゃ?」
「うん、着替えてるよ。試合が終わったからね」
誠さんがにこやかに答えた。
何時の間にやら与一の元へ駆け寄っていた椿さんが与一と何やら話している。
「あれ?え?どうしよう」
花がうろたえていると須貝先輩が出てきた。
「丸川君、ちょっと用事あるから次の試合には戻るって伝えておいて」
「うん、わかったよ」
返事を聞いて納得した表情の須貝先輩は花が開け放った扉から外へ走り去っていった。
葵さんと茜さんが出てきたのはそのすぐ後。
葵さんはドライヤーで髪でも乾かしていたのだろう、ちょっとツンツン気味の茜さんの髪は完全に乾いている。
須貝先輩は割と髪が長い人だったし、髪乾かしてたんだろうな。だから時間かかったんだろう。
「さすがに2日連続は疲れるわな〜」
と、茜さんは大の字になって寝転がってしまった。
時刻はAM10:00ちょっと前。
そろそろ与一達の出番だなと思っていたら乙さんが「ここにいたんだー」と開け放たれた扉から顔を出した。
「与一、椿さん、もうすぐ出番だから着替えておいて」
「はい。与一さん、行こう」
「かったるいなー」
ペチャンと与一の顔に何かが当たった。
葵さんのしていた手袋だ。
「与一君、しっかりね」
笑顔で葵さんが激励、もとい威圧し、「はい、行ってきます!」と与一も何とかやる気を出したようだ。
その様子に気付いているのかいないのか、雪菜さんと楸さんはバスケを続けていた。
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雪月花
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