ガシャーンというありきたりな音で目が覚めた。
音の大きさと睡眠時間の周期的なもののお陰か、やけにスッキリと目覚めた。
音の出所は…台所だ。
制服姿の2人が何やら慌てている。
「どうしたんですか?」
「いやね、ちょっと…茜ー」
「何だー?」
振り向いたら茜さんが僕の後ろに立っていた。
TVの前では誠さんがくつろいでいる。
あんたら2人はいつの間に来たんですかと。
それはともかく、葵さんが指を包丁で切ったとかで慌ててボウルを落としたらしい。
「じゃあ、あと宜しくね」
「おう、任せろ」
ぼけーっとしている間に雪菜さんと茜さんの話は終わったようだ。
「裕君、救急箱はどこかしら?」
「え?あー、ちょっと待ってて下さい」
こっちに越してから1ヶ月程経ったが怪我なんかしたことなかったため置き場所を覚えていない。
TV横の箪笥の上に置いていたのを思い出した。
誠さんはくつろいでるかと思ったら何か偉い細かい表を書いている。
キャベツやらレタスやら書いてあるとこを見るとスーパーの品か部室の食料だろう。
「裕君まだ?」
「あ、はい」
救急箱を手渡し処置の様子を眺めてみる。
葵さんの左手人差し指の腹あたりを1cm程の赤い線が走っている。
「裕君すいません」
処置が終わり、涙ぐみながら葵さんに謝られたけど、心当たりが多すぎてよくわからない。
「いえ、それより大丈夫なんですか?」
「傷自体は大したことないけど、明日の水球はやめた方がいいかもしれないわね。塩素が入ったら厄介だし」
「え?じゃあどうしましょう」
「そうね…」
口元に手を当ててうーんと考え込む仕草をする雪菜さん。
「まあ、それは明日考えましょ。夕飯も出来上がったみたいだし」
台所の方を雪菜さんが促した。
私服姿の茜さんが食器をどれにしようかと悩んでいるのでそちらに向かった。
「何作ったんですか?」
「麻婆豆腐なんだけど皿はどれがいいんだろな」
「あ、じゃあこれを…」
食器棚の下の段から7枚あった中皿のうち5枚を出す。
「お、サンキュ」
皿を並べてからいつの間にか炊けていたご飯をよそうべく茶碗を探すも、茶碗は5つもない。
「どんぶりでもいいですかね?」
「いいと思うぞ」
了承を得たのでどんぶりにご飯をよそう。
「で、何がだ?」
「はい?」
「どんぶりって?」
「ご飯ですよ」
「ああ、なるほど」
適当に答えてただけなんだな。
「んじゃ、あっち持って行ってくれ」
「はい」
どちらがこの部屋の主なんだかわからなくなってきた。
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