とりあえず制服と食材は守れたし、いい人そうな先輩方とも知り合いになれた。
そういえば階段から降りてきたって事は3階の住人の知り合いなんだろうな。
葵さんだっけ?苗字日高だったけど、与一の姉なんてことはないだろうな。
与一の言い方だと姉には逆らえないみたいな感じが含まれていたため、恐い人っぽいし。
あのやんわりとした性格とハイテンション馬鹿の与一に血の繋がりがあるとは思えないしな。
眼鏡の雪菜さんだっけ、あの人も見たことあるようでない気がする。
考えても無駄なのでスルーしておこう。
色々考えながら夕食やら風呂やら済ませるともう11時を過ぎていた。
明日の内容を確認するべくプリントを取り出し、明日の予定を見る。
9:00教室集合
9:20部活動紹介
11:00教科書配布
と、実にシンプルだ。
特に用意するものはなさそうなので明日に備えて寝ることにした。


翌朝、マンションを出ると丁度花が目の前の通りを歩いていたので声をかけて一緒に行く事に。
昨日の様子を伝えると、
「その眼鏡の人何て名前だっけ?」
「確か柊 雪菜サンとか…」
「その人ってもしかしたら…」
「ん?何だ?」
「いや、多分人違いだね。気にしないで」
心当たりがあるのだろうか、機会があれば二人を会わせればいいだろう。
僕も何となく気にはなった名前だけどそれ以上に日高って名前が気になってしょうがなかった。
ちょっと家を早く出すぎたか、8:40には教室に着いてしまった。
既に与一も来ており、漫画雑誌を子供のように目を輝かせながら読んでいた。
「与一のお姉さんって何年生なんだ?」
気になったので聞いてみることに。
「ああ、確か2年だ、俺とは似てないって親からも言われてたぞ」 どっちの親が言ったのかは知らないが、似てないなら与一と葵さんの姉弟の線も見えてきたな。
「そのお姉さんって葵さんとか?」
「お?何で知ってんだ?姉ちゃんの名前は葵だぞ、お前勘がいいなー」
とか能天気に言ってるけど、「勘で名前わかるわけないでしょ!」って花に突っ込まれてるし。
「じゃ、何で知ってんだ?」
「昨日マンションで会ったんだよ、他に3人2年生がいてね」
「それが工作部のメンツだよ。柊さんが部長してる」
知ってる先輩のいる部活になら入ってもいいかなーとは思ったけど部活動紹介で確認するまでは与一に話すのはやめておいた。
それにしても、あのおっとりした人が与一のお姉さんだとは…
担任の指示の元、体育館へ向かう。
適当に座ると与一が横に座った。
結構どこにでもある部活ばかりで大抵は3年生が出ていた。
工作部の番になるとその辺の男子が「おー」とか声を上げていた。
「やっぱ人気だなー」と与一が漏らしたため、「何で?」と聞くと「柊さんは知的眼鏡っ子って事で結構人気あるからな」と教えてくれた。
確かに綺麗だとは思ったけど、それ以上に引っかかる何かがあるためあまり気にしてなかった。
壇上には雪菜さんしか出ておらず、簡単に部の紹介を終えるとすぐに次の部の紹介が始まった。
全部活の紹介が終わると、その場で解散し、各自教科書を取りに行くようにと指示が出た。
与一と一緒に教科書をもらい終え、教室で帰る準備をしていると花も教科書を持って教室に戻ってきた。
「じゃ、部活行くか」と与一が戯言を抜かした。
明らかに僕と花に向かって放った言葉だった。
「お前等の入部届け、昨日姉ちゃんに渡しておいたから」と非常にマイペースだ。
「何でアンタが私の入部届け出してんのよ」
花の意見は最もだが、原因は花なわけだし、「私の」って時点で僕の事は無視していることがわかる。
「昨日のプリント配布の時に二人の入部届けは抜いておいたんだよ」とさも当たり前のように言う与一。
「でも印鑑いるんじゃないのか?」
「んなもん親父に言えば問題ないだろ?」
そういえば、こいつ校長の息子だったっけ…
馬鹿の癖にやる事は早い。
無駄に爽やかな笑顔で僕と花を振り返る与一に「あたしの青春返せー!」と花の回し蹴りが炸裂した。
「へぶぅ」とか言いながらも僕と花の腕を掴んでくるあたり与一の執念が伺える。
こうしていつの間にか工作部への入部が決まっていた。
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