現在自宅療養中…ってなわけにもいかず、夕食の買出し中。
別に制服が嫌ってわけじゃないけど、学ラン着たまま買い物に行くのはまだ抵抗がある。
というわけで、スラックスからシャツを出し、学ランを脱いだだけののんびりスタイルでスーパーマルカワへGO!
今回は財布を忘れないように注意して戸締りもきちんとしてきた。
何気に上の階(3階)が全体的に騒がしかったけど気にしない。
惣菜の美味しそうなのが安売りされてたので買ってみることにした。
色々と詰め込んだ籠を持ち、レジへ向かうも、財布の中身が気になって確認してみることにした。
ラーメン食べたから予定より少し少ない気もするが、何とか大丈夫そうだ。
今夜のメインディッシュは惣菜の唐揚。
何だか初日から忙しかったかなとか思いながら帰路につく。
ガルル…
そう、アイツがいた。
今日はまだ日が暮れてないせいか、以前程の不安がなかったためアイツ…つまりはズボン噛み破りチワワの姿を確認してみることにした。
キョロキョロと辺りを見回すも姿を確認できない。
そしてまたしても聞こえる唸り声…
ガルル…
やっぱ恐い!逃げよう!と思った瞬間僕は走り出した。
また裾を噛み破られたら1着しか準備してない制服のスラックスが早速無駄になると同時に、明日は穴あきスラックスを履いて大恥をかきながら1日を過ごさなくてはならなくなる。
最後の角を曲がり終えると同時にアイツは現れた。
運よくマンションとは逆方向にチワワはいる。
一瞬それらしき姿を確認すると同時に昼間の与一ばりの「うおおおおおおおお!!!」という唸り声を上げながら僕は走った。
世間体を考えれば路地で「うおおお(略」なんてとてもじゃないけど言えない。
けれども明日からの学校生活を考えるとスラックスを履いた状態の僕には世間体なんてあったもんじゃない。
マンションのドアを開け、急いで閉める。
外には世にも恐ろしい顔をしたチワワがガラスの扉に体当たりをかましてくる…
その形相と言ったらドーベルマン並みの牙を口から出し、よだれをダラダラたらしながらありえない程に吊り上った目を向けてくる。
何でもこのマンションのガラスは全て防弾ガラスらしいのでガラス越しにゆっくりとチワワを観察してやった。
何かビキビキ音がした…
チワワの頭蓋骨に皹でも入ったか?
とか思っていると防弾のはずのガラスに皹が入っていた。
そこで恐怖に立ち竦んでいると日高高校の制服を着た4人組が階段を降りてきた。
男1人女3人の組み合わせだ。
何か見覚えのある男は以前のスーパーマルカワの青年バイト、背の高い女の人はペットボトルを指で回していた人だった。
恐怖と驚きでチワワと4人組を見比べると青年バイトさんが「あ、君は…」とか呑気に挨拶をしてきたがそれどころじゃない。
「あのチワワが襲って来るんです!」と青ざめながら言うと一番おっとりした女の人がガラス戸に向かって歩き出した。
「え?え?」
とうろたえていると眼鏡をかけた女の人が「大丈夫だから見てて」とチワワの方を見るよう促した。
おっとりした人がドアを開けチワワの前でしゃがみ込む。
先ほどの形相はどこへやら、チワワは非常に愛らしい表情で素直に撫でられている。
背の高い女の人が「あの犬、食べ物の匂いを嗅ぎ付けると見境なしに襲ってくるんだ」と教えてくれた。
ようやく落ち着きを取り戻した僕はこの制服の4人が何者なのかが気になっていた。
校章の色で学年が判別できることはしっていたので4人のを確認してみると皆2年生だった。
チワワが去ったようなので、わけもわからず「ありがとうございました、ありがとうございました」と頭を下げると青年バイトさんが
「この間の財布を忘れた少年だね」と声をかけてくれた。
「あ、あの時はどうも」と再び頭を下げる。
「知ってるの?」
「ああ、バイトの時に買い物に来てくれたんだ」
眼鏡の女の人と事も無げに話す。
「じゃあ、あの時のペットボトルを落とした奴か」
と背の高い女の人が話しかけてくる。
「あの時はどうも」
4度目の会釈。
「あら、茜も知ってるの?」と眼鏡の女の人。
なるほど、背の高い人は茜って言うのかとか考えてると
「誠とも知り合いなんだろ?」
何故か僕に振ってきた。
「あ、最近越してきたばかりの中村 裕と言います、このマンションの2階に住んでるんです」
「じゃあ、1年生かな?」
「はい。新参者ですが宜しくお願いします」と仰々しい挨拶をしてしまった。
誠と言われた青年バイトが「僕は丸川 誠。あのスーパーの店長の息子なんだ」と自己紹介してくれた。
眼鏡の女の人が「私は柊 雪菜。2年生ね」と簡単に続く。
何故か自己紹介ムードになっていたのでさっきまでチワワの相手をしていた女の人が「私は日高 葵、よろしくね」とやんわりと教えてくれた。
ん?日高?とは思ったものの、良くある名前なので「はぁ」と受け答えしてみる。
「あたしは、遠山 茜。茜でいいよ」と言うので、「あ、わかりました」と答えておいた。
「じゃ、僕も誠でいいよ」
「私も雪菜で」
「私も葵でいいですよ」
と続けられたので何だか下の名前で呼ぶことになってしまった。
とは言ってもマンションで会うか学校で会うくらいしかないだろうけど。
まあ、不思議と違和感がなかったし、チワワの正体(?)もつかめた事だしOKとしておこう。
そんなこんなで2年の先輩方に別れを告げ、自分の部屋に戻ることにした。
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雪月花
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