「さあ、食え!」
何故か得意気に料理を勧めるのは茜さん。
まあ、手伝ったらしいから少しは得意気なのは理解できないこともないのだが。
「苦っ!」
隣で与一がそう声を上げると同時に…何も飛んでこなかった。
口に入れてみると確かに苦い。
何故なら苦味を生かした料理、ゴーヤーチャンプルなる物が並べられていたからだ。
料理の出来云々よりも、味覚的な問題だろう。双子と茜さんは非常に美味しそうに食べている。
「これ、誰が作ろうって言ったの?」
尋ねたのは非常に料理に不満気な花。
「ああ、あたしだよ。久々にこういうの食べたくなったんだ」
道理で得意気なわけですな、茜さんは。
というか、得意とかどうとか言う以前にこの味は苦手だ。
火加減や、食材の歯ごたえなんかはしっかりしているものの、それ以上にゴーヤーの苦さが強烈だ。
与一の失礼な発言を聞いたら葵さんが容赦無く何かを投げつけるのが当たり前なのだがそれがないって事は…と葵さんの様子を伺ってみる。
非常に気分が悪そうです。
「ゆ、雪菜ちゃん…私駄目みたいです…」
消え入りそうな声で雪菜さんにすがる葵さん。
雪菜さんも困ったような表情を浮かべている。
葵さんのもう片方の隣にいた誠さんは雪菜さんの視線にたじろいでいる模様。
ん?何か目と目で会話してる?
誠さんが諦めたように「わかったよ」と呟いたのが聞こえた。
「あのさ、茜」
「ん?」
ゴーヤーチャンプルとご飯を機嫌良く頬張っていた茜さんが誠さんに振り返る。
「これ、茜好みの味付けにしただろ?」
「当たり前だろ?」
「そりゃ、多少は自分好みの味にしてもいいだろうけどさ、さすがにこの味は…何ていうか強烈過ぎるよ」
言っちゃった!言っちゃったよ誠さん!
でも、僕の本音もそうだったりする。
「そうか…」と残念そうに俯く茜さん。少し絵になってるけどそこは気にしない。
それよりももっと反論すると予想していた数名はしおらしくなった茜さんの反応に驚いていたりする。僕もその1人だ。
「えー、そうですかー?」「美味しいですよ、これ…」
双子の茜さん援護発言は常人の味覚を超越した物ならではの発言と認識しておこう。
多少、誇大表現が過ぎるかもしれないがそれ程までに強烈なのだ、この味は。
「じゃ、この味でいいって人は自分の分だけ皿に盛っておいてくれるかしら?ちょっと味付けを変えてみるわ」
見事なまでのタイミングで雪菜さんが切り出した。
どうやら誠さんが茜さんに注意を促して大人しくなったところで雪菜さんが決着をつける会話を目でしたいたらしい。
与一はもう、苦い苦い言いながらも1人で平らげてしまっていたので「えー!マジですか!?」とか慌てふためいている。
ペチッっと力ない投げ物が与一の額に直撃した。
どうやら葵さんが最後の力を振り絞って何かを投げつけた模様、何なのかは敢えて確認しない。
キッチンに立った雪菜さんは何故かキムチジャムを取り出していたが、もう何も言うまいと心に決めていたので無視することにした。
程なくして雪菜さんが微妙に赤みがかったゴーヤーチャンプルを大皿に盛って持ってきた。
土曜の昼食第2ラウンドはこれからだ…
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