「いいんじゃない?これっぽいの去年葵が作ってたはずだし」
ええ、相談と同時にOKもらいましたよ。
つーか、去年葵さんが作ってたのか〜へぇ〜そうなんだ〜って、盗作?
「材質変えれば色違いでいいと思いますよ〜」
ちょうど雪菜さんの横にいた葵さんが賛成してくれた。
よし、盗作疑惑解消っと。
というか、葵さんって本当に工作してたんだ…失礼かもしれないけど凄い意外。
「設計図って程の物じゃないけど、細かい採寸とか描いてあったのがあったはずよ」
「確か保管室に置いてあったはずです」
保管室?
「じゃ、裕君、葵と取りに行って来て」
「は、はい」
何か一気に真面目になった感じだ。
保管室ってどこだろうと葵さんの後について歩く…
ん?作業場(居間とガラス戸で仕切られてる)今まで入った事なかったけど、木の匂いするなぁ〜
そのまま作業場を通り過ぎ、更衣室と言われていた場所の隣の部屋に入る…
ああ、ここに木材とか置いてあるのか。
部屋の隅にあったラックから数枚のプリントがホチキス留めされた物を取り出した葵さん。
「はい、これです」と渡されたけど…結構内容難しくないですか?
パラパラと捲って「よくわからないけど、ありがとうございます」と答えておいた。
「雪菜ちゃんの描く設計図は結構本格的だから、最初はわかりにくいかもしれませんね」
居間に戻りながら簡単な説明を受ける。
「慣れればすぐですよ」とわけのわからない励ましが嬉しかった。

他人に教わらずに何かを始めるのは慣れてる、料理然り。
料理は基本的な事は美月の母親に学んだけど、大体は本を読んで作っていた。
今思えば、美月の母親は僕に自分の家の料理を作らせるために僕に教えたんじゃないだろうかと思う。
設計図を見せると雪菜さんは「これこれ、じゃ、頑張ってね」と笑顔で見送ってくれた。
ってなわけで、設計図を見ながらそれっぽい木材を探す…
設計図通りに切り分けてあるはずもなく、定規で測り鉛筆で目安となる線を引き、その辺にあったのこぎりで切り始める。
これが中々に難しく、力を加えすぎるとのこぎりの刃がぐにゃりと曲がり何だか不安になる。
コツを掴んだ頃、何故か与一が「何やってんだ?」と現れた。
「本棚作ろうと思って木を切ってるんだよ」
「あ、そっか。工作部だったな…」
真面目にやってるのにすっ呆けた事を言うのはやめてほしい。まあ、僕もさっきまで似た思考を巡らしていたけども…
何故かというよりも必然と与一の後ろについてきた椿さんが色々とアドバイスをくれる。
そっか、工具店の息子さんだっけな。
どうにも僕は線の通りキッチリ切ろうとしていたのが間違いらしい。
あとで断面を鑢(やすり)で削って整えなければならないから線より少し大きいくらいに切った方が安全なんだそうだ。
「人生ゆとりを持たなくちゃね」とどこかで聞いた事のあるフレーズを口にする椿さんは楽しそうだ。
幸いにも、ここには電動の鑢があるため、少しくらい歪になってもすぐに整えられそうだ。
こうやってあれこれと話しながら木材を切っているだけで昼過ぎになっていた。
昼過ぎと言えば…そう、昼食だ。
とはいっても、こんな木屑だらけの格好でキッチンに立つのは忍びない。
「昼食どうしようか?」2人に聞いてみる。
「裕が作るんじゃねーの?」
「いや、だってさ。こんな木屑だらけの格好で作るわけにもいかないだろ」
「それなら楸に頼もっか?」
与一と一緒に「えっ?」と椿さんを見る。
「だって、花ちゃんは作れそうにないし、雰囲気的にも外食ってわけにも行かないでしょ。それに先輩に頼むのもどうかと思うし、楸ならそこそこ作れるからね」
なるほど…
でも、楸さんってケチだとか言ってなかったっけ?
「じゃ、頼んでくるね」
あまり期待せずに待つことにした。
BACK INDEX NOVEL 雪月花 NEXT