シャワーを浴び、動くにも寝るにも苦労しそうにない身軽な服を着る…そう、ジャージだ。
ジャージといっても下の方だけで、湯上りなだけに上半身は長袖のシャツのみだ。
とまあ、風呂上りくらいはゆっくりしたいなとベッドに身を預ける…時刻はPM9:30。
日ごろの疲れのせいかそのままウトウトしてしまうも、何とか気力と根性で立ち上がった。
どうせ暇になるだろうしなと最近は読んでなかった文庫本の小説を一冊手に取り、シャツの上に適当な物を着てさらに上着を腕にかけて部室へ向かった。
部室の鍵をまだもらってなかった事を思い出した。
普段の買出し後なら鍵は開けっ放しになっているのだが、今回は「みんな寝てるから」と雪菜さんが鍵をかけていたんだっけ。
一応インターホンを鳴らすも反応はなし。
少し待ってみようと暗くなった校舎の方を見る。
ここからでは窓なんて1面も見えないので不思議な怪奇現象等に怯えたりすることもないわけだ。
って言っても、この世に霊とか神とかは存在しないし、そういったものは全て錯覚やプラズマ現象なわけで、全く持って恐いとは思えなかったりする。
ぼんやり校舎の壁を見つめていると後ろから「わっ!」と声がした。
後ろには濡れた長い髪を垂らした幽霊なんてものじゃなく(しつこいけどそんなもん存在しないし)湯上りでサッパリした様子の雪菜さんだった。
さすがにいきなりなので驚いてしまったけど、それは人の本能ということで勘弁してほしい。
「裕君って反応薄いのね」
何だかつまらな気にそんな事を言われてしまったけど、実際は驚いたわけだし文句を言われる筋合いは多分ない。
ていうか、階段からこの玄関前までの数メートルを足音1つたてずに近づいた雪菜さんが何者なのかと問いたい。
「で、何してるの?」
「部室が開いてなかったから待ってたんですよ、まだ鍵もらってなかったし」
「そっか、みんな寝ちゃってたから鍵まだ渡してなかったんだっけ」
この人に罪悪感とかあるのかな?
まあ、あまりにも遅いようなら携帯に電話するとか、最悪でも自室で待機or住人として管理人室へ電話するとかいう手があったわけだ。
「あ、でもさっき来たばかりだから問題ないですよ」
「そう、それは良かったわ」
素直に受け止められても困る事ってあるんだな。
「とりあえず中に入りましょうか」
「そうですね」
居間の電気は消してあったため、外よりも部室の方が暗かったりする。
かといって寝てる人ばかりなので電気をつけるのも躊躇してしまうわけで考えてしまっていたわけだが…
ポチッっと音がして居間に電気が灯る。
「みんな寝ちゃってるのにいいんですか?」
「こんな時間から寝ちゃってる方が悪いのよ。もし起きればそれでいいし」
実にサバサバした答えだ。
無意識に毛布を頭まで引き上げる動作をする人が多数、与一なんか毛布が上半身にしかかかってなかったりしてなかなかに愉快な格好だ。
「とは言っても、座る場所を確保するだけで精一杯みたいね」
そう、この部室の居間は広く作られてるとは言え7人が勝手気ままに横になって寝ていると座るスペースを確保するだけでも大変なのだ。
もし卓袱台を端に寄せて、きちんと並んで寝ていたら10人くらいまでなら余裕だろう。
一応卓袱台は片付けてあるので例の如くノートパソコンを開いて操作を始める雪菜さん。
僕も一応本を持ってきたわけだから読むとしようか。
「あ、先に部室の鍵渡しとくわね」
鍵をもらったので読書開始だ。
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雪月花
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