鍋奉行というものを御存知だろうか?
そう、簡単に言えば集団で鍋物をする時に張り切って取り仕切る人の事をさしてたりするはず。
それが目の前にいる…誠さんだ。
というわけで、今日はすき焼きだったり。
そう、週末ということなので雪菜さんの提案から簡単な宴会を開く事になったのだ。
何故か普通にビールを飲んでる茜さんと与一。
カンパーイって缶あわせてるし。
今夜は無礼講と判断したのか葵さんの投げ物攻撃はない。
「ほら、そこの肉食べないと堅くなっちゃうよ」
因みに鍋は2つでカセットコンロも2つ準備してある。
誠さんは2つの鍋の中間あたりで色々と指示を出している…自分が食えよ!
雪菜さんと葵さんは誠さんの指示を受ける前に絶妙なタイミングで具を皿に取っている…さすがだ。
双子と花は誠さんの指示出しにオロオロしながら野菜中心に食べている。
誠さんの隣に座らせられている(茜さんに半強制的に)僕は誠さんのとばっちりを受けていた。
「裕君は自分の作った料理を美味しく食べてもらおうとは思わないのかい?」
向かいに座ってる茜さんと与一にコーラを注がれた誠さんが僕にネチネチと話しかけてくる。
ん?2人が意地悪そうな笑みを浮かべてるぞ…え?黒生!?
誠さんのコップにはコーラと言われていたはずの黒生がコップの中間あたりで泡を立てている。
誠さんは絡み上戸なのか…普段とは正反対だな。
「裕君、お肉足りないわよ」
普通ならむかついてるはずの雪菜さんの発言に今ばかりは感謝した。
理由をつけて誠さんの隣から離れられるからだ。
僕という標的がいなくなった誠さんは与一以外の1年生3人に絡み始めた。とは言ってもセクハラじゃなくて説教モードだ。
冷蔵庫に肉を取りに行き、雪菜さんのところへ持っていくと…葵さん寝ちゃってるよ。
与一がコーラと偽ってこれまた黒生を飲ませた模様。
因みに茜さんは大爆笑中。
「今夜は荒れるわね…」
雪菜さんの一言が頭に深くこびり付いた。
それなりの酒を飲んでた与一は普段と全く変わらない様子だ、酒強いんだな。うわ、ゲーム始め出した。
茜さんは何がおかしいのかまだ笑ってるし。
誠さんに酒をすすめられた双子と花は寝ちゃってるけど、誠さんは3人が起きてるかのようにしゃべり続けている…タチ悪。
雪菜さんと僕だけが酒を全く飲まなかったわけだ。
その雪菜さんは最初の黒生一口で寝てしまった葵さんを横にして寝かしつけている。
1人で食器類を片付けているけど、このままどうするんだろう?皆さん泊まるんでしょうか?
まともな会話のできる組み合わせがない中、雪菜さんの声が聞こえた…電話してるようだ。
「ええ、今日から簡単な合宿みたいな物を企画しておりまして…はい、いきなりだったものですいません」
どうやらこのまま帰すわけにはいかないと判断したのだろう、部員の家に連絡しているみたいだ。
居間に戻ってみると戦場跡のようだった。
どこから持ってきたのか(多分回転扉の向こうだろう)雪菜さんが寝ている人に毛布をかけている。
与一は器用にもゲームしながらいびきを掻いているけど雪菜さんに毛布をかぶせられ横になってしまった。
誠さんと茜さんは話しor笑い疲れたみたいで寝言を言いながら寝ちゃってる。
ただ呆然と立ち尽くす僕の様子に気付いた雪菜さんはとても疲れた様子で笑いかけてくる。
「何か…凄いですね」
ようやく出た言葉がこれだ。
「本当にね…さすがにこれは予想外だったわ」
この一歩手前までは予想できたということなのか、そうだとしたら凄いよアナタは。
「さすがにこのまま放置して帰るわけにはいきません…よね?」
少し期待して言ってみる。
「私は立場上残らなきゃいけないけど、裕君はいいんじゃないかな。居てくれた方が助かるんだけど」
そういえば雪菜さん部長だったっけな。
うーん、これで帰ったらかなり卑怯者っぽいレッテルが貼られそうだ。
「じゃ、シャワーと着替えだけしてきてもいいですか?このままってのもちょっと嫌なんで」
「そうね、後で戻ってくれば問題ないから泊まる準備だけしちゃおうか」
ベランダ際に置いていた学ランを取ってから自室へ戻った。
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雪月花
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