「あらあら今度は…コホッ」
そんな声が聞こえた…またこのおばさんか。
気付いたら「あらあら」って聞こえてるんだよな、ストーカーか?
「裕君どうしたの?」
「いえ、何か聞こえたみたいだけど空耳っぽいかな」
僕にしか聞こえてないのだろうか?
「今日は何がいいですかねぇ〜」
いっつも考えるのはめんどいのでリクエストを聞いてみる、めんどかったら却下。

返事ないな。
ふと振り返ると何か瓶を持ってる雪菜さんの姿が目に入った。
僕の視線に気付いたのか「瓶入りのジャムって結構日持ちするから買ってみようかなって」
なるほど、それなりに考えてくれてるようだ。
「そうですね、ちょっとした隠し味にも使えるかもしれませんし、数種類あってもいいんじゃないですか?」
「うん、じゃあ買っちゃいましょう」
そう言うや否や、僕の持ってる籠に4つのジャム瓶を入れていく…
ブルーベリー・イチゴ…この辺は王道だな、ママレード、実際見た事ないけど美味しそうだ、ん?最後はキムチ!?
これジャムですか?
「珍しいから買ってみようと思ってね」
何故か得意気な雪菜さんの発言を聞き流し、瓶の底から中身を覗いてみた…うん、ペースト状だ。
「ほんと珍しいですね、こんなのちゃんと食べられるんでしょうか?」
「賞味期限までは持つはずでしょ」

もう何も言うまい。
言うだけ無駄だ。
うん、日持ちじゃなくて味とか匂いが受け付けられるかどうかが問題だったんだけど、もういいや。
「そうですね、無駄にしないように賞味期限までには食べちゃいましょう」
「あまり美味しくなかったら裕君の家の食卓にでも並べておいてね」
残飯処理なら与一だろ?
「あんまりのんびりしてたら戻っても休む時間なくなっちゃうわよ」
キムチジャムの瓶を片手に呆然としていると急かされた。
不安要素持ち込んで、さらに迷宮入りさせようとしたのが自分だって自覚はあるのかな?いや、ないだろう。
この人は僕を色んな意味で惑わせてくるけど、からかってんのか、自覚症状あってのことなのか…謎だ。
「そういえば裕君はどこで料理覚えたの?」
過去は振り返らないタチだって以前言ったでしょーが。あれ冗談だったけど。しかもあの発言流されたし。
「中学の時に両親とも日本とか世界とか放浪するって言い出したんで、隣の美月のお母さんに教えてもらったんですよ」
思考とは裏腹に正直に答えてみる、別に隠す事じゃないし。
「美月ちゃんって…あの娘の事か。なるほどねぇ」
うん?何か納得されたぞ?
そんなこんなでいつの間にやらレジに到着し、会計を済ませ荷物を持って部室へ向かう。
ジャムの瓶がカチャカチャ音を立てて五月蝿い。
今日チワワが現れたら逃げ切れるだろうか?
まあ、時間が時間だけにまだ現れそうにない感じがする、勘だけど。
勘が当たったのかどうかはわからないけどチワワはいなかったため難なく部室に戻れた。
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