「え?ここ?」
発言者は外見以外至って普通(多分)な椿さん。
何となくの考えだが、どちらかと言うと楸さんの方が性格破綻してるらしい。
与一が先輩達に話をしている、多分双子の入部に関してだろう。
「こんにちは」と挨拶を交わし、「あら、保科工具店の…」と雪菜さん。
「お久しぶりです」「おひさしぶり〜」と双子が返す。どうやら知り合いの模様。
「裕君、昨日の工具店の店長さんのお子さんなのよ」と耳打ちしてくる雪菜さん。
何故か少し赤くなりながら「そ、そうなんですか」と返してしまう。
依然、背中に引っ付いたままの花が「昨日どっか言ったんですか?」と雪菜さんに聞き返してる。
「そうよ、デートみたいなものね」と雪菜さん微笑みながら…
「裕ちゃんの浮気者〜!」と僕の頭を殴ってから楸さんに飛びつく花。
楸さんは「ヨシヨシ」と頭を撫でている。仲いいんだな。
後ろからポンポンと肩を叩かれ「修羅場だな…」と他人事のように茜さんがつぶやいてくる。
もう、わけわかんねーよと「さっさと部室行きましょうよ」半ば命令口調で雪菜さんに言う。
「恐いわねぇ…」とクスクス笑いながらフェンス扉を開け階段を上がっていく雪菜さん。
何気にオートロックらしいフェンス扉…マンションの入り口より豪華だな。機能だけは。
部室に入ると「うわ」「何これ」と声を上げる双子。
まあ、当然の反応だな。
花が2人に説明している模様。
椿さんが「さ、さすがね…」と妙なリアクションをしてくれたのには驚いた。
「もうお昼は済ませてあるわね。今日は簡単な活動の説明をします」と卓袱台を壁際(回転扉の前ではない)に寄せて適当に座って話を聞く一同。
「むこうを見ればわかると思うけど、とりあえずは作りたい物を作っちゃって下さい。設計図とかが必要な場合は私が書くか、書き方を教えるわ。一応作業場はそこだけど、横に更衣室があるから作業の時には着替えてね。何か質問は?」
「はいはいはーい!」と与一。
「何かしら?」
与一への視線が少し冷たいのは気のせいか?
「3サイズ…」ガスッっと鈍い音がしたので葵さんが何かを投げつけたらしい。
慌てて介抱する椿さん。
「や、野郎の介抱は嫌だ…」と一応意識は保っていたがあえなく気を失う与一。
止めに花が腹にエルボーを入れたのは皆スルーだ。
誠さんだけが苦笑している。
何故か椿さんが与一に膝を貸している。
端から見れば羨ましい光景だが、中身は男である椿さん。勿論着替えてないため女子の制服のままだ。
「何か質問は?」
何事もなかったかのように言う雪菜さん、今度は笑顔だ。
「はい」
とりあえず気になったので手を上げてみる。
「はい、裕君」
「えっと、材料とかの余分はあるんですか?足りなくなったりしたら買出し?」
あの工具店に木材もあったけど何だか行く気がしない。
「一応それなりの在庫はあるわよ、でも皆での合作なんかを作る場合は市販の材料じゃ物足りないから山に選びに行く事になるわね」
「あ、えーと、何か展示会みたいな物でもあるんですか?」
「高校単位ではそういう物はないけどたまに一般のコンクールにも応募するわ。大事な資金源だしね」
最後の一言が気になったが「わかりました」と答えておいた。
「他に質問は?」
「…ないようね。とりあえず今日は自由って事で」
横に座っていたはずの与一は失神中なのでその横にいた椿さんを見てみると…与一を心配する様子はまるで彼女だな。
前の席(因みに座椅子)に座っていた誠さんに色々頼んで工具とかの説明をしてもらった。
どうせ入ったんだから時間を有効活用して料理以外の時間は真面目に何かを作ろうと決心したからだ。
花と楸さんは椿さんの膝で伸びてる与一に悪戯をしているし、雪菜さんと葵さんは端に寄せた卓袱台で何か話し込んでいる。
というわけで誠さんと茜さんの長身コンビと散歩に行く事になった。
「え?何か作るんじゃないですか?」
「少し体を動かしておくのも大事だよ」
相変わらず爽やかですね、誠さん。
「そうそう、今から焦っても下手な物作って絶望してしまうだけだしな」
妙に悟ったようなサッパリした口調で茜さんが言う。
因みに2年生は大抵行動を一緒にしているが、皆鍵は持ってるらしい。
玄関を出たあたりで与一の悲鳴が聞こえたが2人とも気にする様子は全くなかった。
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雪月花
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