与一と花が来るまでボーっとしていたら男女のカップルさんに「おはよう」と声をかけられた。
自己紹介はほとんど聞き流していたので名前は知らないが顔を見る限り同じクラスの生徒らしい。何気に二人が長髪で中性的で似てるのは気のせいだろうか?
向こう…と言っても男女カップルなのだが、もう、どう見てもアンタらバカップルですかってぐらいに引っ付いてる。
これが男男カップルなら大爆笑なのだが…
その割には対応が普通なので会話をしていた。
とはいっても、「おはよう」と返した以外は朝の独り言の瞬間や電柱回避の瞬間を見たよとからかわれただけだったが。
一通り話し終えると二人は去っていった。名前は知らないままだ。
HRの予鈴の10秒程前に与一が悠々と現れたので「あの二人の名前わかる?」と聞いてみたが、「あいつら誰?」と質問で返されてしまった。
HRの終わり頃に花が大きな足音を立てて教室に入ってきたりしたけど、それ以外は昼休みまで普通に過ごせた。
昼休み、花は普通に御両親が自宅に健在の様子で弁当を持ってきていたが、僕と与一は学食だ。
花はいつの間にやら仲良くなっていたらしい友達の方へ行ってしまった。お陰で与一との抗争が起こらないなとホッとする。
まあ、そのグループに男が一人混ざっていたのは気にしない事にしよう、それも朝のカップルの片割れだなんで絶対に気のせいだ。
本当なら僕も弁当のはずだが、朝早く起きても食材がなかったため今日は断念。与一は学食生活を送るつもりらしい。
まだよく学校内の地理がわからないため、与一の案内の元、3分程で食堂へ到着。なかなかの賑わいぶりだ。
他愛も無い会話を与一としながら食券を買うため並んでいると「中村君も学食なんだー」と声をかけられた。
振り向くと、朝のカップルの片割れの女だった。つーか、男は女の子の集団に混じって弁当を食ってるのに呑気なもんだな。
「えーと…」と困惑してると「あ、私は保科 椿(ホシナ ツバキ)、朝一緒にいたのは双子の楸(ヒサギ)ね」って、いいタイミングで教えてくれた。
その後3人で談笑(?)しながらどうせだから一緒しようとそれぞれ無難に定食を頼んで適当な席に座った。
「保科さんって双子だったんだね」と口を開くと、
「あ、椿でいいよ、楸と苗字一緒だから使い分けにくいでしょ?」
「双子なら当たり前だよなー」ってどことなくトゲのある発言をする与一。
「そういう日高君だって校長の息子でお姉さんがいるんでしょ、似たようなもんじゃない」
と、特に気にしてない様子。
「まあ、お前等と違ってクラス違うし珍しい苗字でもないしなぁ」
「うんうん、私だって妹と一緒のクラスだからちょっと面倒起きないかなって心配だもん」
微妙に日本語おかしいのは気にしない事にして、何か妹とか言いませんでしたっけ?
「えー、妹って言わなかったっけ?もう一人いるわけ?」
「アハハー、あれでも楸は女の子だよー」
「でも男子の制服着てなかった?」
「今日は私が女子の制服着たくなっちゃってさ、無理言って交換してもらったんだ」
「…ということは?」
「うん、私男だよ」
とんでもない事言いやがったぞ、こいつ!?
「女装癖は早めに直した方が懸命だぞ」と与一は言ってるけどそういう領域じゃない気がする。
「そだねー、考えとくよ」とニッコリ笑う椿さん。その笑顔はどうみても女のものだ。
制服の雰囲気が顔に滲んでるって事だろう。
これにあまり驚かない与一の精神構造が気になるが、それ以上に制服交換しあう双子の精神構造も気になる。
「あ、でも授業中は席も入れ替わってるから先生には内緒ね」
言っても信じられそうにないので流しておく。
「でも、妹は弁当なのに兄貴は学食なんだな」
「楸は何気にケチだから私の分までは作ってくれないの…」
グスンと泣き真似をする椿さん。どう見ても女だ!
これは誰かに言うべきなんだろうか…
どうにも頭がうまく回転しないまま3人揃って食堂を後にした。
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