夕方、各自一度帰宅してから再び大学に集まった。
 キタが僕と西条のところまで車で迎えに来てくれたので、大学まで再び歩くという手間が省けて助かった。
「ねえ、キタ」
「何だ?」
 外を見ている僕は二人の会話に耳を傾けた。
「私、あなたの考えがまだわからないんだけど、本当にただの肝試しのつもりなの?」
「違ったらどうだってんだ?」
 ミラー越しにキタの笑う顔が見えた。
「もし、キタが噂を信じてて、それを確認するつもりで行くのなら、私はキタの邪魔をするわ」
「どういう事だ?」
 大学の前に人影はない。
 それを知ってか知らないでか、二人は会話を続ける。
「考えても見なさいよ。オーナーが死んだと言われてるのは何年も前なのよ?それが今になって噂されるって、絶対に裏があると思うのが普通でしょ?」
「そういう事か」
 苦笑しながらキタが西条に振り向いた。
「俺がそれに関わってるかも知れないって事だろ?そう疑われても不思議じゃないからな」
 西条の言う裏ってのが僕には良くわからなかったが、優等生同士には通じ合うものが流れたらしい。
「どういう事?」
 たまらず会話に割り込んでしまった。
「だから、肝試し発案者の俺が人数を集めさせて、主導権を握ってると言ってもおかしくない状況だろ?西条は万が一の事を考えて俺に釘を指したってわけだ」
「西条、それは酷いと思うよ」
 いくら西条が冷酷な女であっても、数年来の友人をこんな事で疑うのは良くない事だ。
「後で疑うよりも今言っておいた方が後腐れないでしょ?何だか嫌な予感がするのよ…」
 西条が言い終えるかどうかというタイミングで車の窓がノックされた。
 キタと似たような格好をした派手な男だ。
 後ろには三人の女子もいる。
「後は祟だけか。あれがそうみたいだな」
 車の前方を歩く小柄な人影が見えた。
「彩杜、後ろに行きましょ」
 何か話でもあるのだろう、西条に言われるがままに真ん中の列から一番後ろの狭いスペースへ移動した。
 やってきた祟と西条に挟まれる形で最後尾の席に座り、前列の騒がしい集団の話を聞きながら車に揺られた。
「懐中電灯持って来たよ。キタキタ君、どのくらいで着きそう?」
「そうだな、十五分ってとこか」
「そっか」
 助手席の女子はそれ以来自分から口を開く事なく、他の四人に相槌を打ったりする形で会話に参加していた。
 その様子に違和感を覚えたのは西条も一緒らしい。
「彼女、何か知ってるのかもね」
「そうかもね」
 今探りを入れたところでどうにもならない。
 左隣でブツブツ言っている祟が多少怖かったが、特に問題なく元デパートの廃墟前に到着した。
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