「なあ、サイト」
「ん?」
 相変わらず最後尾の席に座る僕とキタ。
 真剣な表情で尋ねて来るもんだから、何事かと身構えてしまった。
「お前は美琴で良いな?」
「は?」
「だから、夜の肝試しだよ。西条なんかとペアになるのは嫌だからな。くじに細工加えておくから美琴が良いならそう言え」
「別に誰でも良いよ」
 拍子抜けしたせいか、間の抜けた声になってしまった。
「そうか。なら、新情報だ」
「何?」
 間を置いてキタは話を再開した。
「あのデパートな、どうやら隠し部屋みたいなのがあるらしいぞ」
「隠し部屋みたいなのって何だよ」
「朝電話で情報集めてたんだけどな。下調べに行く時間が無かったから行った事がある奴に聞いたら隙間風がどうだとか言ってた」
 隙間風?
「それだけで隠し部屋と考えるのか」
 浅はかな考えだ。
「まあ、待て。隠し部屋じゃなくて、何かに使われていた狭い部屋かも知れないだろ?隠そうと思って作られたんじゃなくて、何かの拍子で隠れちまったんじゃないかってな」
「それで何かあるわけ?」
「お前、あのばあさんに話聞いたんだろ?」
「聞いてたのか」
 電話してると思って油断してたら、僕と西条の話もちゃんと頭に入れていたようだ。
「部分的にしか聞こえなかったけどな」
「じゃあ、逆に訊くけど、キタは何でデパートの事を調べてるわけ?」
 肝試しに行くのなら、余計な情報はなくてもいいはずだ。
「そういうとこだけは鋭いんだな」
 苦笑しながらキタは続ける。
「オーナーの話は知ってんだろ?」
「うん、昨日聞いた」
「オーナーの姿と幽霊の姿が一致してる事も知ってるな?」
「うん」
「じゃあ、オーナーの死因は?」
 死因?
「おい、まさか生きてる人間の幽霊がいるなんて思ってないだろうな?オーナーが死んで、デパートに未練があるから幽霊の噂も立ってんだぞ」
「それくらいはわかるよ。ただ、死因とかデパートに結びつけた事なくて…」
「お前なぁ、幽霊ってくらいなんだから、未練のあるとこにいるに決まってんだろ?そういうとこは抜けてんだな」
「五月蝿いよ」
 だから祖母はオーナーの話から始めたのか。
「その前に、キタは幽霊を信じてるわけ?」
「半々だな」
「どういう事?」
「幽霊なんてのはいてもいなくても一緒だと俺は考えてる。だから、いても良いし、いなくても良い。存在を信じるのは見てからで十分だ」
「それじゃ、肝試しなんて思いついたのは…」
「そうだな。いるなら見てみたいと思ったのが最初だ。ついでに女と仲良くなれれば…」
 それからのキタの言葉は覚えていない。
 キタの目的は僕の考えとは若干のズレがある事がわかっただけでも良かったと言えるだろう。
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