金曜日の朝、キタのアパートの前で待ち合わせをして三人で大学へ向かった。
「楽しみだな」
キタは子供のようにはしゃいでいる。
この様子だと、ある程度の事を知っていて、それを誰にも伝えずに参加者を募ったようだ。
「どうかした?」
キタの様子はともかく、昨日の祖母の話が忘れられずに歩いていると西条に顔を覗き込まれた。
「いや、昨日ばあちゃんに話聞いたんだけど…」
「彩杜も気にしてたんだ?」
意外とでも言うかのように西条はまじまじと僕を見た。
「幽霊なんていないと思ってるけどさ、昨日の祟君の様子から何かあるんじゃないかと思って聞いてみたんだけどね」
「何かわかったの?」
「ネットでの情報にばあちゃんの見解が加わった程度の話だよ。大した内容じゃない」
キタは僕達を気にする事なく、電話をかけながら前を歩いている。
「気になるわね」
「何が?」
「あのおばあちゃんが気にする程の噂なんでしょ?それくらいの噂の場所に行く前日に、祟君の様子に違和感を覚える事があるって事がよ」
「は?」
「だって、彩杜と祟君は初対面だったんでしょ?」
「そうだけど」
「それなのに普通じゃないと彩杜は思ったわけ。しかも、その原因を噂だと考えて、一々おばあちゃんに訊く程気にしてる事がね」
「つまりは、噂を気にしている僕が気になったと」
「そういう事」
まどろっこしい気の仕方だ。
「実際行ってみないとわからないし、噂はただのデマかもしれないだろ?僕が気にしてる事なんか、西条が気を使う程の事じゃないよ」
「だから、彩杜の様子が変だったから気になってるんじゃない」
「僕の事なら気にするな」
「はいはい」
こういう時、西条はアッサリと身を引く。
僕自身、自分でもわからない事で悩んでいるのだから、深く追求されればされる程こんがらがってしまう。
その事を数年の付き合いで察してくれているのか、本当にどうでも良いのかわからないが、西条の冷たいとも取れる態度は今の僕には有難かった。
内心、ホッと息を吐いた次の瞬間、二人の人物から同時に声をかけられて飛び上がる程驚いた。
「おはよう!」
「おはよう」
美琴と祟だった。
元気な美琴に対し、祟の雰囲気は相変わらず暗い。
「二人とも一緒に来たの?」
西条が尋ねると、美琴が前に出て言う。
「さっきそこでバッタリ会ったんだ。ほら、そこの道から駅に通じてるでしょ?」
後ろには、さっき僕達が歩いて来た十字路があり、僕達は直進してきたわけだが、昨日の祟の家の方角からして駅からの道と通じていたのだろう。
「祟君は大学の裏の方に家があるの?」
「うん。別の大学に通ってる友達と住んでるんだ。幼馴染なんだよ」
女は女同士で話し始めたため、依然と電話を続けているキタを除く僕と祟も他愛のない話を始めた。
その日の講義中、デパートに関する追加情報を知る事になる。
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