先にカツ丼とラーメンを頼んでいたキタに追いつき、場所等の話を聞き出した。
 西条はカルボナーラ、僕は蕎麦といなり寿司を手にしている。
「ああ、昔噂になったあのデパートね。潰れてから結構経つし」
「で、最近になって幽霊が出るって噂になったんだ。誰が言い出したのかは知らないけど、バスも電車も通ってない場所だから詳しい話を聞こうにも聞けないってわけ」
 僕は黙々と蕎麦を啜る。
 キタは自分用のワンボックスカーを持っているので、恐らくそれで行く事になるだろう。
「サイトは何も聞かないんだな」
「噂の内容なんか聞いたって大した意味ないだろ?どうせ行くなら手はずは任せるよ」
「気楽なもんね」
 西条の皮肉を聞き流し、箸をキタのカツに伸ばした。
 同時にキタも僕のいなり寿司に箸を伸ばしていた。
「交換だな」
「そうだね」
 昔から弁当のおかずでやっていたやり取りを済ませ、上品にカルボナーラを口に運ぶ西条を尻目に食事を終えた。
 ラーメンのスープを一滴残さず飲み終えたキタと西条はほぼ同時に立ち上がり、僕も釣られて立ち上がった。
「ジャンケンポン!」
 いきなりのジャンケンはキタが負け、三人分の食器を舌打ちしながら片付けるキタを置いて西条と歩き出した。
「クラスの人から誘うつもり?」
「そうね。何人か話しやすい子がいたから声かけてみるわ」
 教室に向かう途中、ペットボトルのジュースを自販機で買った。
 西条は手持ち無沙汰に待っており、駆け寄って来たキタと三人で階段を上がった。
「んじゃ、任せたぞ」
「はいはい」
 席は自由な教室だが、大抵の場合は男女別に座る事になる。
 入ったばかりの大学なので、まずは同性の友達を作る事が大事なのだとキタは言っていた。
 午前の退屈な二コマの後、食事を挟んで受ける心理学は眠気を誘う。
 時折聞こえる生徒間の会話を無視し、講師の話は進められる。
「携帯鳴ってんぞ」
 ウトウトとしながらノートを取っていた僕はキタに言われるまで気付かなかった。
 携帯はバイブすら切ったマナーモードにしており、机の上に置いていたのでキタでも気付いたというわけだ。
「西条からのメールだ」
 ディスプレイを見ながらそう呟くと、キタは先を促してきた。
「女子が三人行きたがってるって。あ、こっち見てる」
 斜め前方の西条の席の近くでは、割と落ち着いた感じの女子が数人固まっている。
「あの三人か…じゃ、男子一人追加するって伝えてくれ」
「大丈夫なの?」
「西条じゃねーんだ。一人や二人のアテはいくらでもいるさ」
 車の乗員の方を気にしたのだが、キタには上手く伝わらなかったようだ。
 詰めれば八人くらいは乗れるだろうし、気にせず西条にメールを返した。
 その数十秒後、了解の返事と共にキタへの伝言を含めたメールが届いた。
「了解だってさ。それとキタに伝言って」
「何て?」
「後で殺すって」
「あいつは地獄耳か…」
 講義の後、笑顔で近寄ってきた西条にキタは必死で謝っていた。
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