「ここで彩杜は幽霊を見たという事になってるんだけど…」
西条はツカツカと柱の一本に歩み寄ると、その根元を蹴り上げた。
意外とアッサリ外れた柱の表面に対し、それがあった場所には人が一人出入り出来るくらいの入り口があった。
その入り口は下への梯子になっている。
「幽霊が出たという位置から考えると、この一本が一番気になっていたの。今は外されてるみたいだけど、鏡を使えば隠し部屋に置いていた人形とかを映す事も可能なはずよ」
「で?」
キタが冷たく訊き返した。
「で?って?」
「だから、それが映ったからってどうやって時間を調整するんだ?」
確かに、僕が幽霊らしきものを見たのは十数秒かその辺だ。
「それがまだわからないんだけど、これだけ材料が揃ってれば、何らかのトリックを使って幽霊らしく見せる事も可能じゃない?」
「それがわかったからと言って、西条はあいつ等をどうするつもりだ?」
「別にどうもしないわよ。ただ、こんな茶番に付き合わされた分の謝罪はしてもらうけどね」
「それならあいつらは最後までこのトリックとやらの説明を求めて来るぞ。自分達が二人でやるには時間の都合が合わないってな」
西条は黙ってしまった。
全体的な証明や、二人を犯人に仕立て上げるまでの説明は良かったが、最後に一番大事なトリックを残したままである。
ただ、僕には一つ疑問が残っていた。
「気になったんだけどさ、何で二階に氷なんて置いたと思う?」
「だから、それは西条が言った通り、冷たい風を吹かせるためだろ?」
西条を見ると自信無さ気に頷いていた。
「それじゃ、冷たい風を吹かせる意味は?」
「それは、雰囲気を出すためとか…」
西条は言ってて違和感を感じたようだ。
「おかしいだろ?雰囲気を出すために冷たい風を吹かせるなら、二階でやるよりここでどうにかした方が良いに決まってる。もし、懐中電灯を持っているのが西条だったら、祟が転んでもすぐに立ち上がらせてお仕舞いだよ。下手に怪我したように思われたら中止だってある」
「サイトは何が言いたいんだ?」
「だから、氷には別の意味があったって事。例えば、ワイヤーか何かを繋げて、その出入り口の上の方から幽霊が下に下りるように見せかけるとかね」
「それよ!」
何か閃いたらしい西条は、出入り口から下の方を覗いた。
「あそこに何か引っ掛ければ、二階の通気口から指を入れるだけでどうとでも出来るわ。ワイヤーの端を持ち上げて、氷の溶ける時間も計算していれば…」
言葉を切って西条は少し悩んだ。
「ここ、降りても大丈夫かしら?」
「何で?」
「だって、実際見に行かないと納得出来ないじゃない。隠し部屋がどんなのかも気になるし」
「でも、その梯子結構古そうだよ」
「川嶺さんか祟君も通ったはずでしょ?それなら私くらいでも行けるはずよ」
体重の話ってわけじゃないんだけど…
「じゃあ、すぐに戻って来いよ。何かあったら呼べば俺かサイトが降りるから」
「わかったわ」
不安と期待の入り混じった表情で西条は柱の中を降りていった。
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