「もういいのかい?」
 タクシーの横で煙草をふかしていた運転手に頷き、後部座席に並んで腰を下ろした。
「運転手さんはここのオーナーの死に方とか聞いた事ありませんか?」
 ストレートな質問を投げかけたのは西条。運転手は動じた様子もなく淡々と答えた。
「五年も前の事だからねぇ…あの頃は色々と噂になったもんだよ。屋上からの自殺とか、急な地盤変動の亀裂に飲み込まれたとか」
「落下が死因なのは確かなんですね?」
「ああ、警察もそう言っていたはずだが」
 この辺一体の地盤が緩いのは噂に聞いていたが、それに飲み込まれたのであれば地震か何かの原因があるはずだ。
 二人の会話を聞き流しつつ、帰ってから祖母に訊く事のリストを頭の中に浮かべておいた。
「ここでいいのかい?」
「はい。ありがとうございました」
 気が付けば僕の家の前だった。
 西条はさっさと降りて門の方へ近付いている。
「じゃあ、僕も」
「待ちなさい」
 ん?と運転手を見ると、商売人の目で睨まれていた。
「往復で八千四百円だよ」
 目は真剣だが、口元には笑みが浮かんでいる。
 渋々財布から一万円札を出し、お釣りを受け取って車を降りた。
「最初から払わせる気だったのか」
 西条に駆け寄りそう文句を言うと、不敵な笑みを返され無言で家の中に入って行った。
 今度から西条と二人でタクシーに乗ったりするもんかと心に決め、祖母がいるはずの部屋へ歩いた。
「おばあちゃん、入るよ」
「はいよ」
 西条に続いて僕も部屋に入った。
 パソコンのディスプレイに向かっていた祖母が顔を上げて眼鏡を外した。
「二人共、これ見てみなさい」
 吸い寄せられるようにディスプレイを見ると、『金曜夜、例の廃墟に幽霊現る』とか何とかのスレッドの画面だった。
「もう噂になってるんだ」
「馬鹿ねぇ、川嶺さんか祟君が流した情報に決まってるじゃない」
 少し考えて頷いてしまった。
 キタや他のメンバーが流した話にしては、随分と内容が詳し過ぎる。
 当事者である川嶺と僕が噂の発信源の有力候補になるわけだが、僕ではないので川嶺となる。
 川嶺と祟があの幽霊騒ぎの犯人ならば、当事者の側から川嶺が、第三者の側から祟が見解を述べているように見えてもおかしくない。
「さてと、二人には訊きたい事が山程あるんだよ」
 にこやかな笑みで僕と西条に向き直る祖母。
 三人による情報交換が始まった。
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