「彩杜はここのオーナーがどんな人だったか知ってる?」
「いや」
 祖母からは仕事中はいつも和服を着ていた美人だとしか聞いてないし、キタからも死因を聞こうとして話がそれたままだった。
「和服を着ていたと言われてるの。しかも、決まって白色で、死体を見た人は白装束に見えたとも言っているらしいわ」
 白装束は祭事や凶事の際に着るものとされており、昔の人が自殺をする時に着ていた服でもある。
「もしかして、オーナーの死因って自殺?」
「噂では色々よ。自殺と言われれば、男に殺されたとも言われてるの。今は屋上には入れないけど、そこから飛び降りたとか落とされたとかで、確かに落下が死因だった事に間違いないらしいわ」
 落下…確か、この辺の地盤も緩いと聞いていたけど、あまり関係はなさそうだ。
「続けるわよ」
「あ、うん」
「客の前に現れては、対応する従業員のフォローを行っていたらしいの。オーナーが直々にって話になって、結構評判が良かったらしいんだけど、オーナーは目に見えて窶れていったらしいわ」
 心労か何かだろうか?
「そして、デパートが閉店され、しばらくはその処理に明け暮れていたらしいんだけど、まだ半分も終わらないうちに屋上から飛び降りたと言われてるわ」
「わかった」
 今回の川嶺と祟の行動に関係があるのかどうかは知らないが、これ以上聞いても無駄だと判断した。
「そして、幽霊の噂が立ったのがオーナーが死んでから丁度五年後の三月八日。私達がこっちに来る前の話ね」
「じゃあ、最初からキタは関係なかったんだ」
「恐らくね」
 キタは僕と西条共々、前住んでいた所で大学合格後遊び回っていた。
「それを知っててキタを疑ったの?」
「違うわ。この事を知ったのは昨日帰ってからだもの。ネットではどんどん新しい噂が立ってるのよ?」
 そんな事を言われても、僕はインターネットなんてしないから良くわからない。
「キタには悪い事をしたと思ってるわ。でも、あの時疑ったからこそ、今は無関係だと思えるの」
 犯罪ではないとしても、僕の知らないところでキタが何かを企てたと考えたくはない。
 その点は西条も同じ考えだが、西条は直接聞くという方法を取ったのだ。
「それで、本当の事を知りたかったの。キタが言い出した事を二人が利用したのか、それとも二人がキタを利用しようと近付いたのかどうかから、全てを」
「じゃあ、西条はここであった事が全部出鱈目だと思ってるんだ?」
「当たり前でしょ?彩杜は幽霊を見た事になってるけど、私は見てないんだもの。見た本人である彩杜ですら信じてない事を信じろって方が無理だわ」
「わかった。じゃあ、ここであった事を話すよ」
 一度フロアを見回した後、階段を下りようとしたら川嶺の声に釣られて振り返り、幽霊らしき姿を目にした事。
 二階から三階に階段を上がる時は急かされた事…等々。
「さっきは考え事してたから忘れてたけど、二階から三階の階段の時は私も急かされたわ」
 一階から二階の間では遅く、二階から三階の間では速く…そう仕向けられたのだとしたら…
「段数を調べてみましょ」
 西条の言葉に頷き、三階から二階への段数を調べた。
 全部で三十六段。
 二階から一階へは、二十四段しかなかった。
 一段が十五センチだとして、百八十センチの差がある事になる。
「フロアの高さを見てみたいけど、今日は道具がないから無理みたいね」
 大体の目安では、一階も二階も天井までの高さに違いは見当たらない。
 三階に関しても差はないようだったし、その上の屋上に関係はなさそうだ。
 一度話を纏めるべく、僕の部屋で話し合う事に決め、帰りのタクシーに乗り込んだ。
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