タクシーの運転手はどうせ暇だからと言い、帰る時まで廃墟の前で待っててくれる事になった。
運転手から聞いた話をまとめてみる。
・川嶺と祟は軽く膨らんだリュックを手にしていた。
・どちらともなく緊張した面持ちで、祟は頻繁に周囲を気にしていた。
・お互いに会話をしようという様子はなく、運転手が話しかけたら全て川嶺が応対した。
こんな感じだ。
二人がどのくらい緊張していたのかは想像もつかないが、何かを企てようとしたのならばそれで話に筋が通る。
持っていたというリュックはかなり大きく、スポーツバッグくらいの容量はありそうだったらしい。
運転手に例を言い、廃墟の前で待ってもらいながら西条と廃墟に足を踏み入れた。
昼間というのもあって割と明るかったが、フロアの詳細を調べるためにと西条がペンライトを準備してきていた。
「一階は何もなかったのよね?」
確認してくる西条に頷き、二階への階段を上がった。
「ここで何か話さなかった?」
「何でわかるの?」
「祟君と川嶺さんが今回の事を企てた犯人だとすると、それぞれとペアになった私達に対して同じ行動に出ると思うの。私はここで話しかけられ、少し歩くのが速いと言われたわ」
「僕もペースを落とすように言われたよ」
なるほどと考える仕草をしてから西条は二階のフロアに上がった。
「当たり前だけど、エレベーターは使えないのね」
「そりゃそうだろ。電気が通ってないんだし…」
そう呟きながらエレベーターの方を見た。
割と広いフロアなので、階段とエレベーターは東側と西側に設置してある。
「どうかした?」
じれったそうに振り返る西条に返事を返し、違和感を覚えたエレベーターからマネキンの方へと向きを変えた。
「これからは川嶺さんと祟君がした行動についての類似点を挙げましょう」
「わかった」
二人が共犯で、この廃墟に幽霊が出ると言う噂を使った…若しくは噂の発端ならば、僕と西条に対する牽制的な動きが重なる事もあるだろう。
「祟君はこのマネキンの裏で懐中電灯を落としちゃったの。それから噂のマネキンだと思ったら二人して観察した後に三階に上がったわ」
「マネキンの目は光ってなかった?」
「ええ、今と同じよ」
あの時と同じようにマネキンの目に手を伸ばした。
塗ってあった何かが消えている。
「祟君がしゃがんでいた時間はどれくらい?」
「しゃがんだなんて言ってないのに良くわかったわね。大体十秒もかからなかったと思うわ」
「その後で冷たい風を感じたと」
「そうよ」
マネキンの裏に回り、どこかに隙間でもないかと周囲を探った。
「それより、川嶺さんの方はどうだったの?」
「まず、懐中電灯の光にマネキンの目が反射したんだ。それから、何か塗ってあると思って近寄って、その目に触れようとしたんだけど」
一度言葉を切って西条の反応を待った。
「したんだけど?」
促しに返すように言葉を続けた。
「次の瞬間に幽霊が出たと騒がれたんだ。丁度、マネキンの向いてる方向にね」
そう言って川嶺が指差した場所を指差した。
「あの辺?」
「暗くて良くわからなかったから懐中電灯で照らしたよ。でも、僕には幽霊の姿なんて見えなかった」
その後に背後から冷たい風を感じたと説明すると、西条は三階の様子を見に行こうと早足になった。
「何かわかった?」
「マネキンに関してはわかったわ。冷たい風は出所さえ掴めれば…多分ね」
自身有り気に頷く西条の背は真っ直ぐで、階段を上がりながらその後姿に凛々しさと力強さを覚えた。
BACK
INDEX
NOVEL
現推
NEXT