三階に上がる階段では、早く終わらせたいのだろうか、川嶺に急かされる形で急いで上がった。
「早く見て回ろ。なんか気分悪くなってきたよ」
 さっきよりも近くを歩くようになり、三階のフロアを流す程度に見回して階段を下りようとフロアに背を向けた。
「あ…」
 間の抜けたような、怯えたような声に振り返り、川嶺の見ている先を僕も見た。
 そこには薄っすらと白い存在があった。
 その瞬間、一瞬恐怖に駆られて逃げ出したくもなったが、川嶺は床に腰をついて動けずに震えている。
 川嶺の手を取り、少し引きずるように階段の方に動いた。
 それと同時に、懐中電灯の光で幽霊と思しき存在を照らす。
 光を当てようとした時、不意に懐中電灯の光が消えた。
 霊の仕業なのかとその時は本気で思ったものだ。
「い、いや…」
 自分では立つことも出来ないのか、体を震わせながらも川嶺は幽霊の方から目を離さない。
 和服を着ているようにも見える幽霊は、そのうちスッと姿を消してしまった。
 呆けたようにその場に立ち竦んだ後、慌てて川嶺の肩を揺さぶった。
「え…あ、あぁ…」
 僕の目を見ず、どこか遠くでも見るような目に僕は嘘を覚えた。
 実際に幽霊にあった人間がどんな反応をするのかはわからないが、本当に怯えている人間の目には見えなかったからだ。
「とりあえずここを出よう。立てる?」
 慌てて頷く川嶺に手を貸しつつ、懐中電灯の調子を見直して点きそうになかったので月明かりを頼りに階段を下りた。
 建物三階分の階段を下り、一階に着いた時には少し落ち着いている自分に気が付き苦笑が漏れた。
 本当に幽霊を見てしまったんだろうか?だとしたら、それに怯えていたのだろうか?
 顔色を悪くした川嶺と建物から出た後、キタの車にすぐさま乗り込んでそれぞれのペアの話を聞き始めた。
「さっき言った事と重複するんだけど、私達の時は何もなかったわ。ただ、二階で冷たい風が吹いたのは覚えてる」
 西条の言葉を確認するように祟を見ると、頷くだけだったので話し出したキタの方を見た。
「俺の時も何もなかったな」
「あ、あたしも西条さんの言う冷たい風みたいなの感じたよ。マネキンの目がちょっと光ったようにも見えたんだけど」
 キタとペアだった女子の言葉に続き、大沢と美琴も口を揃えて似たような事を言う。
「あ、点いた」
 助手席でゴソゴソやっていた川嶺が懐中電灯のスイッチを入れると、キタの顔が光に照らし出された。
「眩しいだろ!」
 小さく笑う声が車に響き、川嶺が謝った後に事情を語り出した。
「一階では何もなかったんだよ。二階に上がってから嫌な感じがしたの…西条さんが言った冷たい風も感じたし、マネキンが泣いているようにも見えた」
「あれは何かが塗られてただけだと思うけど」
 思わず口に出してしまった。
「そんなのわかんないよ!だって、幽霊がいたんだもん」
 え?と西条以外の女子が川嶺を見る。
「神寺君も見たでしょ?白い和服を着たような幽霊がいたの…」
「見たには見たんだけど…」
 二階では川嶺だけが、三階では僕と川嶺が見た後、懐中電灯が点かなくなった事等を話した。
「当たりはお前等だけか」
 キタは言葉の後、不機嫌そうな川嶺達を送るべく、車を発進させた。
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