僕の名前は神寺 彩杜(カミデラ サイト)。
 よく仏教関係者なのかとか、ネット関係者なのかとか言われるが、普通の短大生だ。
 趣味は漫画を読む事。
 実は、こうやって文を書き上げていく事にかなりの苦痛を感じる。
 しかし、これからの社会ではパソコンも扱えないようじゃ…と言われる事が多くなり、練習代わりに渋々この文章を書き上げている。

 その出来事はキタのお誘いから始まった。
 僕の前を歩く二人を紹介しよう。
 右を歩く男は北岡 喜多(キタオカ キタ)、高校三年間同じクラスで、出席番号の関係でいつも席が前後していた。
 あだ名はキタキタ。どこかの古い妖怪のようだが、本人も気に入っている様子。僕は「キタ」と呼んでいる。
 性格は至って不真面目。しかし、高校三年間成績の面で僕が勝った事は一度も無い。
 僕が馬鹿なわけではなく、キタが天才型なのだと思っている。そうでも思わないと報われないからだ。
 その左を澄まして歩いている女は西条 樹遊(サイジョウ キユ)。
 僕達の行動を遠くから見ていたと言う彼女は、高校二年からのクラスメイトだった。
 容姿は上の中と言われるだけあって中々の美人なのだが、馬鹿をやっていた(ように見えるらしい)僕達に興味を持ち、行動を共にする事が多くなった。
 一見ちゃらけた女好きなキタと西条の二人が並んで歩くと周囲の視線を集める。
 そのキタの好みは可愛い系。西条は男に興味無し。そんな二人のやり取りは端から見れば恋人同士かも知れないが、冗談でもそう言うと西条から殴り蹴飛ばされる事間違い無し。
 さっきからキタはしきりに西条に女友達を誘えと言い寄っている。
 西条の反応は冷たく、十三回目のウザイを呟いた。
「なあ、サイトからも言ってくれよ」
「話の内容も知らないのに何も言えるわけないだろ」
「そうよ。いきなり女を二人集めて来てくれなんて言われて、『はい、わかりました』なんて言えるわけないでしょ」
 西条の言葉は春の陽気を打ち消すかのように冷たい。
 『はい、わかりました』の時だけ柔らかな笑顔だったので、他の時の口調が尚更冷たく感じる。
「だーから、肝試しに最適の古い建物見つけたんだって!和服を着た女の幽霊が出るとか、眼の光るマネキンがいるとか」
「それで女の子を後二人ってどういう事なの?」
「俺とサイトに西条だろ?男は一人霊感の強いって奴が来たがってるから、後女が二人いれば三組のペアが出来上がるだろ?」
「別にペアじゃなくても良いんじゃ?」
 僕の疑問は当然のものだと思う。
 古い建物の肝試しに、わざわざグループを分けて行く必要性なんか感じないからだ。
「お前、暗いとこで女二人きりになりたいとか思わないのか?」
 それがさも当然であるかのようにキタは言う。
「もし西条のいる数人のグループで行ってみろ、女と仲良くなるどころか置いて行かれて朝まで迷子だ」
 こっそりとそんな事を耳打ちしてくるキタは次の瞬間、手を後ろで捻り上げられていた。
「誰がそんなくだらない事に付き合うなんて言ったのよ。私も彩杜も行くなんて言ってないでしょ」
「その時は西条の紹介してくれた女二人と霊感の強い奴…祟っつーんだけど、そいつと行くから大丈夫だ」
 簡単に関節を外して抜け出したキタはあっけらかんと言う。
「そんな事したら誘った私が女の子に怪しまれるじゃない」
「だから西条も来いって言ってんだよ。その人数合わせにサイトもな」
 ようやく話が飲み込めた。
 でも、この時期、しかも大学に入ったばかりで肝試しなんてのもなぁ…
「それで、怖い物見たさに行く建物はどんなとこなの?」
「ちょっと、西条行く気か?」
「だって、幽霊が出るなんて気になるじゃない。下手に断ったらこいつがどんな生き恥を増やすか知れたもんじゃないし」
 確かに西条が断ったらキタはどこかしこでナンパをし兼ねない。
 そんな奴と同じ大学の同じクラスだなんて知れたら、僕と西条も笑いの種になるだろう。
 まあ、西条自身も怖い物見たさってのがあるんだろうけど。
「西条来てくれるか!サイトも行くよな?」
「僕だけ断るわけにもいかないだろ」
 渋々といった様子で言ったが、幽霊なんて存在しないと思っている僕は逆に興味をそそられた。
「じゃあ、今度の金曜日空けといてくれよ。西条も頼んだからな」
 返事も聞かずにキタは食堂へ駆けて行った。これから混む時間だからだ。
「大学に入ってもガキはガキね」
「良いんじゃない?これを機会に西条も友達増やせば」
 男女共から近寄りがたいイメージのある西条の悩みは女友達の少なさにある。男友達は僕とキタだけらしい。
「失礼な事言わないでよね。彩杜よりはいるんだから」
「僕と女友達の数を競ってどうするんだよ」
 そんな会話をしながら僕と西条も食堂へ入った。
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