###################とっつき開発史########By コーラルスカイ########## #################################################################### 「できたぞ、ついにできたぞ!」 徹夜明けの職員達はそういって顔を綻ばせ涙を流した。 地下世界レイヤードには「クレスト」・「ミラージュ」と並び、「キサラギ」という珍品を作らせたら レイヤード一と評される会社が存在している。同社は風変わりなFCSから ジェネレーター、オプションパーツに至るまで手広く「濃い」パーツを開発していた。 人類が地上から地下に移ってから数え切れないほどの年月が経ち、現在は企業間 の醜い争いが顕著になってきている時、キサラギはある画期的な右腕武装 「射突型ブレード」を開発した。 この武装の威力は軽く当たっただけでもMT相手に3000以上のダメージが与える事が可能である。 これはカラサワ4〜5発分にも相当する。しかも、密接して命中した際には恐ろしいことに これが数倍にも跳ね上がる為、全弾クリーンヒットした場合には現在確認されている武装の中では 最も威力があると言う報告が同社からされている。 「最強、その称号はKWB-SBR44(後のNIOH)にこそ相応しいのです」 開発に関わった研究者は誇らしげにこう語っている。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 当初、「射突型ブレード」の開発に関する報告を読んだ上層部は額を寄せ合って噂をし合った。 「大丈夫なのか?そもそも射突型ブレードってどういう意味なんだ・・・」 心配するのも無理は無いだろう。名称だけではまるでレーザーブレードを打ち出すような装置にも聞えなくも無い。 それだったら普通にレーザーライフルでも作ったほうが早いし安価だ。 「いや、私の聞いたところによると、どうやら巨大な「杭」を相手に叩き込む兵装らしい。」 「この書類には超近距離用兵器と書いてあるが」 「俺の情報網からは、刃を火薬で打ち出すという話だが・・・」 「大丈夫なのか? また開発部門の暴走にならないのか?」 上層部の噂話はあながち間違ってはいなかった。 射突型ブレードは火薬を利用して巨大な「杭」状の刃を打ち出す装置であり、 超近距離に置いて威力を発揮するという代物であった。 射突型ブレードは遠距離にいる敵を打ち倒す銃火器ではなく、近接兵器であった。 つまり、バレルダムやアリーナ・アヴァロンヒルと言った戦場で敵を弾丸で打ち倒す代物ではなく、 駐車場や廃工場で動きが鈍ったACや、動作が鈍く、やる気のないMTなどを沈めることを得意とする武器である。 ・・・もっとも、腕さえ良ければ鷹や鷲のように華麗に舞い、一瞬で勝負をつける事も可能であるが。 さらに言うならば、APと防御の厚いタンクや、重装備にシールドまでつけた重2脚等と言った軽量機体では弾切れで 泣きたくなる様な相手でも、近距離から物理的に強力な一撃を叩き込んで必殺の一撃になる武器だと言うのだ。 「杭」は使い捨てでなく再利用を可能としている。つまり刃の届くところまでが有効射程であり お世辞ともレンジが広いとは言うことができない。その代わりにレールガン並のスピードで打ち出される 「杭」が相手を削岩機で砕かれる岩のごとく削り取るため爆発的な物理的ダメージを与えることができる。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 初めてできた試作品はテストのためレイヴンを雇い、試験戦闘を行ってもらうことにした。 パイロットは近距離戦闘に優れたレイヴン。有効なデータが取れそうだ。 研究者の視線が集まる中、ACにブレードが取り付けられる。問題なく取り付けが完了した時、 研究者の間からは歓声と安堵のため息が流れていた。 試験場には既に仮想敵とされるMTが待機している。いよいよその真価が試されるときだ。 見守る視線も不安と期待で入り混じっている。 物が物だけに無理は無い。 「だが安心しな。すぐに結果を出してやるよ」 レイヴンから緊張を解す様な一言が入る。 MTが動き出す。 テストが開始された。 「じょ、冗談じゃ・・・」 新たな可能性に胸を膨らませていた研究者達はこの一言で我に返った。 そして目の前の光景とカメラの画像を見て真っ青になってしまった。 映し出された画像は横転するMTとして残った敵の的になっているAC。 何故ACが唖然としているかは横転したMTを見て明らかになった。 命中した部位が「へっこんでいる」だけでまったく損傷していないのだ。 再生画像を見ると、ACがモアをそれこそ「殴り倒す」か「押し倒す」程度にしか見えなかった。 とてもじゃないが貫いているようには見えない。これでは新兵器どころかただの日曜大工道具だ。 「こんなはずじゃ・・・おいっ! 早く中止してくれ!」 「助ける(中止する)つもりなどもとよりない・・・・」 「いいか、俺は中止が嫌いなんだ」 ビデオを再生して呆然としている研究者を他所に、試験場ではACの虐殺ショーが続いていた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「コイツには失望した。もう何も期待はしない」 激怒したレイヴンから射突型ブレードが突っ返される。怒って踏みつけたのか、フレームが破損している。 平静を装いつつ研究者達が再度あらゆる角度から何が悪かったのか調べなおす。 すぐに問題点が明らかになった。フレームと「杭」のサイズが微妙に合わず、摩擦により勢いが減殺されていたのだ。 さらに、火薬の質も要改善とされ、より上質な、危険度は上がるが爆発的な勢いが得られる物に換装されることとなった。 腕部との接続が上手くできているかも確認し、コアのCOMに新兵器のデータの登録も再度行われた。 これで大丈夫はずだろう。 「このデキで、(また)失敗する筈がないんだ」 自信満々な研究者達によって再びテストが行われた。 今回もレイヴンを雇い、MTとの模擬戦闘によってデータを収集するつもりだ。 要改善とされる点は全て修正した。今度こそという気持ちで研究者達は画面を見つめる。 栄光への扉が開かれる。 模擬戦が始まった。 「嘘だろ・・・・」 栄光への扉は開いてくれなかった。 目の前の惨事に研究者、レイヴン、果ては敵役のMTまで動きを止めてしまう。 ブレードを射突する瞬間に右腕が吹き飛んでしまったのだ。 「どういうつもりだ!」 レイヴンから怒りと戸惑いの声が入る。ACもまるでカメラに向かって怒鳴っているようだ。 「若造が…調子付くなよ!!」 年季の入っていたベテランMTパイロットがその隙を逃さずトリガーを引く。 ACが直撃を食らい派手に吹き飛ぶ。一方的な虐殺が再び始まってしまった。 「報酬分ぐらいは働け!」 研究者の一人が吐き捨てるように言う。 心なしか数人が頷いているようだ。 しかし、無武装でMTを倒すことは不可能だ。たちまちACはパーツと共に炎上してしまった。 「なにが望みなのだ。お前らは・・・」 試験戦闘なのに重症を負ってしまったレイヴンからパーツを返される。 受け取る研究員は皆意気消沈している。無理も無い。精魂込めて改良した一品だったのだから。 2度の失敗は上層部にも届いていた、責任者の首も危うくなりかける。 テックチーフが一人生物兵器課に左遷される。「プロジェクトAMIDA」という新設課だ。 開発チームの存続も窮地に陥っていた。完成品の提出納期が設定されてしまう。 もう後が無い。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 状況が変わったのは数日後の事であった。どこから嗅ぎ付けたのかは不明だが、 クレストより試作新合金の提供の申し出があったのだ。提供といっても実際は超高額な売込みである。 しかし、この合金のデータを見た限りでは他に選択肢は無い。 この合金こそが詰まった状況を打破する為の突破口となりそうであった。 キサラギとしての意地を貫くか、それとも射突型ブレードの為にプライドを捨て、 クレストの提供を受けるべきか。上層部から果ては研究者の間まで広く議論が飛び交った。 「この際プライドは抜きだ!」 「このやろう!」 「これが噂の新合金か」 「どちらが正しいかは開発で決めよう」 様々な議論と拳が飛び交ったが、最終的には申し出に対し「NO」を出した。 ただし、合金のデータの一部は「購入」という形で合意することになった。 早速得られたデータを元にブレードの基盤の再設計がなされた。 できるだけ脆い材質を使用しないのと同時に反動によるエネルギーを逃すための構造が 重要とされた。既に試作案は10を超えている。不眠不休の案出しが進められていた。 2度目の失敗の際の画像とデータも何度も見直された。腕部への負荷の限度とあらゆる 腕部に適応させるにはどうすればよいか何度も討論がされた。レイヴンによっては 軽量級の腕で使用される可能性だってある。あまり爆発力を上げると今度は機体が 吹き飛んでしまうかもしれない。 「・・チ、チーフ・・・・・気、をつけ・・・お前・・も・・」 数日に渡る徹夜作業で心身的に消耗しきる人間が続出した。 医務室は倒れた人間で満員になる。あまりの睡眠時間不足に幻覚を見る人間も少なくない。 コアに組み込む予定のプログラムを編集する部署は最悪だ。仕様変更が250マシンガンの 弾丸のごとく振って来る。一度は完成しかけたシステムを全て破棄させられた。発狂寸前で 病院へ搬送される人が続出する。 「わたしはなにか・・・されたようだ」 それでも現場は挫けなかった。倒れた同僚に自社開発の栄養剤(?)を無理やり打ち込むなど 裁判沙汰になりそうな事をしつつも作業は続けられた。大まかな構造は完成した。 現存する全てのコアに対して組み込む予定のプログラムも準備は出来た。 後はテストあるのみだ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 完成した試作品は「KWB-SBR0X」と名称を付けた。 後は実践あるのみなのであるが、相次ぐ失敗がレイヴンの間でも広がってしまった為 協力者がまったくいない。レイヴンの為の武器がレイヴンに避けられてしまった。 これでは何の意味も無い。 「ここまでか・・・」 開発部は肩を落とし諦めかける。もう納期まで時間も無い。 しかし、一人のレイヴンが協力を申し出る。渡りに船だ。 「レイヴン、協力に感謝する」 心底からレイヴンに感謝したのはあれが初めてではないだろうか。 当時を振り返って研究者の一人はそう述べている。 射突型ブレードと開発者の進退を賭けた最後のテストが行われる。 テスト形式は前回同様でMTと模擬戦を行ってもらう。 研究者がレイヴンに危険性と過去の失敗を全て打ち明ける。 本来なら黙っているのが懸命だが、もう後がないというのを分かってもらいたかったのかもしれない。 「ひとつ、派手にやってやるぜ」 笑いながらレイヴンがACに乗り込む。笑顔が眩しかった。 皆が縋りつきたくなる笑顔だった。最早彼に賭けるしかない。 祈るような目で皆がACに注目する。 ゲートが開かれる。 正面にはMT2体。 「お前もレイヴンなら、戦場で死ぬ覚悟は出来ているな」 前回参加した老齢MTパイロットも今回は真剣だ。殺す気でいる。 ACがオーバードブーストをかける。 MTも射撃準備に入る。 全員がカメラの映像に釘付けであった。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 結果は惨憺たる物であった。 いや、よい意味で惨憺たる物であった。 この試験で射突型ブレードは持てる全ての力を発揮、MTをコックピット諸共貫通するという化け物振りを見せたのだ。 一瞬にしてMTが爆発。この世から消滅してしまう。 「ついに・・・俺の番か・・・」 同僚の予期せぬ事故死を目の当たりにした老齢のパイロットが呟く。 試験とはいえここは戦場。常々そう心がけている。MTの全撃破、それが試験の成功条件だ。 あの威力では直撃を受ければ助かる見込みは無い。しかし、脱出してはテストにならない。 自分がなせることは一つ、若い者を路頭に迷わせてはいけない。 「潮時か・・・」 誰に言ったのかは不明であるが、一言呟いた後にACにライフルを撃ちながら突進。 ACも迎え撃つ体勢をとる。 開発に当たってMTパイロットが2名死亡したことは報告されなかった。 ただ、家族にだけは極秘で伝えられることになった。 「私達は兵器が世の中に蔓延するのを良くは思いません。 ただ、祖父が大きな事に貢献したと言うことは今でも誇りに感じています。」 老齢パイロットの家族は今でも祖父の遺影を誇らしげに飾っている。 背後に写ったMTは生前愛機として乗っていたものだ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 全ての報告を完了して量産の許可を得た時、開発部はお祭り騒ぎであった。 「何してる!? ぼやぼやするな!」 宴会の準備が急ピッチで進められる。今までの苦労が報われたのだ、今日ぐらいは騒ぎたい。 「最後まで付き合ってもらう」 お祭りが始まった。 テストに参加したレイヴンも特別に招待する。 「認めよう、君の力を。今この瞬間から君はレイヴンだ」 レイヴン試験でよく使われる言葉で賞賛を浴びせるものもいた。 「礼を言う・・・」 端の方では初期からの開発メンバーが互いに礼を言い合っていた。 目には光るものがとめどなく溢れていた。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 現在でも射突型ブレードのシェアはキサラギがNO.1である。 他企業や大部分のレイヴンは「リスクが高すぎる武器」として見向きもしないのが現状である。 しかし、使いこなせる人間にとってはこれ以上にない強力な武器であると評価されている。 「思いつきは些細なことでしたが、最終的に皆の意思がここまでこぎ着ける元となりました。」 「その意志が、全てを変える。 まさにこれに尽きると思います。」 感慨深そうに写真に目を向けた元主任の研究者は語り終え、出勤する支度を始めた。 もちろん何時もの研究所へだ。 ―終わり― キサラギ開発の射突型ブレード AC3〜サイレントライン ・KWB-SBR0X ・KWB-SBR01 ・KWB-MARS ・KWB-SBR02/RS ・KWB-SBR44 AC NB・NX・LR ・RASETSU ・ENMA ・NIOH ※後書きじゃないですけど、セリフや武装データ資料はAC WIKIを参照にしました。 ネタとシリアス混合で雰囲気ぶち壊しかも知れません。申し訳ないです。